張り切る敏姫様
敏姫様はまだ寄りたいお店があるようです。
「殿!次はあの店に行ってみたいです」
ええ?姫様まだ歩くんですか?いくら元気になったといっても疲れない??
「健康になったら行ってみたいと思っていたお店なんです」
そう言って姫様が指した先には何のへんてつもないどこにでもあるお茶屋さん。
「……この茶屋で良いのか?」
それは私も容保様に同意だ。かんざしのお店はともかくとしてこのお茶屋は姫様らしくない。屋敷と違ってふかふかの座布団もないし、くつろげないし、庶民が寄るような茶屋なのに……
「このお茶屋さんが良いのです。屋敷にはないお品が出てくるのでしょう?」
「……それは、多分そうだな」
「殿!このお品書きを見て!ぜんざいですって!それにお団子も。お茶も。どれもこれも伏せっていた時には味わえなかったものばかり。一体どのような味がするのでしょう」
「……敏……」
容保様は何事か考えたあと店主に声を掛けた。
その途端、店の者が次々に敏姫様の前に茶菓子やお茶を出して来た。
「えっ?えっ?私まだ何も頼んでいないのですが……」
「……私が頼んだ」
「でも、こんなにたくさん……」
「……このお店のものを全部頼んだ」
「ぜ、全部?!さ、流石に全部は私でもいただけるかどうか……」
「……敏の喜ぶ顔が見たくてな」
容保様はそう言ってまた困ったように微笑んだ。
また笑った!あの容保様が????この人本当に会津藩主?!
「……ッ!//……と、殿はずるいです。それを言われると、もう何も言えなくなるじゃないですか……」
容保様はお茶を手に取った。
「……まだ熱いな」
容保様は湯気の立つ茶を指して姫様を気遣った。
「火傷をしたら大変だ。しばらく冷ました方がいい」
「……そ、そうなんですか?やはり屋敷とは違いますね」
姫様はそう言ってお茶を見つめる。おっしゃる通り。姫様に出すお茶やお薬用の白湯は温度がちょうど良くなるように調整されてるんだから。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




