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もう一度、あなたと。  作者: 杉野仁美
第十章 酒と祭りと不穏な影

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男前のおとめ

酔った虎之助は、饒舌多弁にもなった。

よりによって沖田に絡みにいったのだ。

「ほら、虎之助。もういいから水飲みな。もう負けだ!いいね?」


「まらまらァ!!まらいけりゅぞおりは」


 その瞬間、虎之助がバランスを崩して私を抱きしめるように倒れた。


「おっとお!全く情けないね、ほら虎之助」


 私は虎之助を担ぐようにしてずり落ちないように抱きしめた。


「おとめさんいいのかい。その格好は?虎之助は一応男ですぜ?」


 永倉がおかしなことを聞いてきた。


「はっは!こいつとは阿保なガキの頃からの付き合いだ。今さらそんな気は起こさないよ!それより永倉、ペースが落ちてるよ」


「くくく……新八。女子(おなご)に負けるとは……」


 土方さんが色気たっぷりに酒を(くゆ)らせて笑う。


「お前も一度負けてんじゃねぇか!油断すんなよ、おとめさんはザルなんだから」


「……いらぬ世話だ……うーむ……」


 虎之助の次に斉藤が船を漕ぎ出した。さっきまで平然としてたのに。


 結局、残ったのは永倉と土方さんと私。


 ーー油断ならないのはこちらも同じ。


 永倉も土方さんも。私がやり合った中で1、2を争う手練れだ。


「決着をつけようじゃないか。(とり)の刻までに二人が潰れたら私の勝ち、逆に正気を保っていたら私の負け」


「乗った!」


「ああ、余裕だな……」


「どうかな?私はまだまだ平気だよ!」


 * * *


 数刻後ーー酉の刻に差し掛かると言う時間。


 永倉は大いびきをかいて応接間で大の字になって寝ており、土方さんは自分の腕を枕にしてなんか色気のある感じで寝ていた。


「はっはっは。どうやらまた私の勝ちのようだね!」


 私がそう言って味噌田楽に手を伸ばしたその時ーー


「……しょれに俺ァ知ってるんだぞ……沖田さんは敏姫様に恋してるんだ……」


「何……?」


 今まで冷ややかに熊三人を観察していただけの沖田が、虎之助の言葉に反応して鯉口を切る。


 ためらいなさすぎィ!!


「わぁ〜!!沖田沖田!落ち着いて!酔った虎之助の言うことは鵜呑みにしちゃいけないんだ!」


「……訂正してください……」


 虎之助に刀を構えたまま沖田が凄む。殺気まで出てる!熊三人はみんなぐでんぐでん。


 万事休す!


 くそ〜!怖いけど、私がやらなきゃ誰がやる!


「虎之助!」


 私は虎之助を背後に隠し、護身用の短刀を胸元から取り出す。


 勝てるわけなかったけど、黒谷で刃傷沙汰を起こすわけにはいかない。


「沖田!来い!私が相手だ!」

沖田を相手に挑むなんて、おとめさんは強い女。

この一瞬で主への忠義と、覚悟を決めています。

虎之助は何をやってんの


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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