初夏・葵祭の日
今日は葵祭の日。敏姫は例に漏れず浮かれていた。
そして熊三人と沖田はというと……
今日は葵祭の日。
百姓も酒売りも、呉服屋も武士も、もちろん新撰組も、身分関わりなく楽しむことができる大祭の日だ。
そして例に漏れずーー
「まぁ、とめ!見てちょうだい!昔の人はあのような美しい着物を着ていたのですね。裾を持つ童もなんと美しい……」
大興奮の敏姫様もいるわけで……
「見えてます見えてますから、姫様、落ち着いて座ってくださいよ。容保様〜」
「敏、そのようにはしゃいで怪我をしてはいけない。私の隣に座って」
「……は、はい//すみません殿、あまりにも雅でつい……」
容保様はふっと仕方無さそうに微笑む。
「……わかっておる」
あーはいはい!このご夫婦は毎回こんな感じでいやになるよ。
私とは無縁のまるで新婚ホヤホヤの淡雪みたいな雰囲気を出して……
まぁ仕方ないか。お二人にとってこれは新婚生活みたいなものなんだから。
「いらっしゃいませ〜」
聞き覚えのある声がして振り返ると、永倉が屋台を開いていた。
何してんだあいつは。
新撰組の特徴的な羽織りを隠そうともせず、いかつい男がひとり、いや斉藤もいるから二人。
……いやよく見たら土方さんもいるわ!
何故土方さんまで?と考えたが、今日はそもそも葵祭。街中から人が押し寄せるんだから当然か。
人が増えればそれだけ不埒な輩も出るってもんだ。
私も姫様の警備をしないと。
私が周囲を見渡した時ーー
沖田が気配もなく後ろに立っていた。
「ぎゃあ!沖田、驚かさないでよ!」
なんでいちいち気配を消すかな!
「今日は姫様が祭りを見に行くって聞いたものですから……その警備です」
「警備ならもう熊三人いるけど?」
「……あの熊三人は役立たずです。いざという時に姫様を守れるわけがないです」
「ぶはっ」
珍しく容保様が笑って、飲んでいた茶をこぼしかけた。
「あの三人を『役立たず』呼ばわりとは……総司は頼もしいな。さすが敏の友だ」
「……//別に深い意味はないですけど……」
沖田のその言葉に姫様がパッと顔を輝かせる。
「そうよ沖田さん!私の友達なのだから、隣に座って座って!」
「えっそれは……」
と、さすがの沖田も容保様の姿と姫様をチラチラ見比べた。
「……総司。私からも頼む」
か、容保様!?
あの容保様が沖田に直々に頼んだ!?
ありえへん!しかもこの二人、つい最近までバチバチしてなかったっけ?
あれは幻だった??
「……っ!//」
沖田は胸に再び熱いものが駆け巡るのを感じながら、一礼して姫様の隣に座る。
その顔は、いつもより誇らしげで……
(なるほどね、認められて嬉しいって感じか。人間らしいところもあるじゃないの)
沖田は敏姫と容保公に「友」と認められて、やっと自分の居場所を見つけることができたようです。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




