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もう一度、あなたと。  作者: 杉野仁美
第十章 酒と祭りと不穏な影

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初夏・葵祭の日

今日は葵祭の日。敏姫は例に漏れず浮かれていた。

そして熊三人と沖田はというと……

 今日は葵祭の日。


 百姓も酒売りも、呉服屋も武士も、もちろん新撰組も、身分関わりなく楽しむことができる大祭の日だ。


 そして例に漏れずーー


「まぁ、とめ!見てちょうだい!昔の人はあのような美しい着物を着ていたのですね。裾を持つ童もなんと美しい……」


 大興奮の敏姫様もいるわけで……


「見えてます見えてますから、姫様、落ち着いて座ってくださいよ。容保様〜」


「敏、そのようにはしゃいで怪我をしてはいけない。私の隣に座って」


「……は、はい//すみません殿、あまりにも雅でつい……」


 容保様はふっと仕方無さそうに微笑む。


「……わかっておる」


 あーはいはい!このご夫婦は毎回こんな感じでいやになるよ。

 私とは無縁のまるで新婚ホヤホヤの淡雪みたいな雰囲気を出して……


 まぁ仕方ないか。お二人にとってこれは新婚生活みたいなものなんだから。


「いらっしゃいませ〜」


 聞き覚えのある声がして振り返ると、永倉が屋台を開いていた。


 何してんだあいつは。


 新撰組の特徴的な羽織りを隠そうともせず、いかつい男がひとり、いや斉藤もいるから二人。


 ……いやよく見たら土方さんもいるわ!


 何故土方さんまで?と考えたが、今日はそもそも葵祭。街中から人が押し寄せるんだから当然か。


 人が増えればそれだけ不埒な輩も出るってもんだ。


 私も姫様の警備をしないと。


 私が周囲を見渡した時ーー

 沖田が気配もなく後ろに立っていた。


「ぎゃあ!沖田、驚かさないでよ!」


 なんでいちいち気配を消すかな!


「今日は姫様が祭りを見に行くって聞いたものですから……その警備です」


「警備ならもう熊三人いるけど?」


「……あの熊三人は役立たずです。いざという時に姫様を守れるわけがないです」


「ぶはっ」


 珍しく容保様が笑って、飲んでいた茶をこぼしかけた。


「あの三人を『役立たず』呼ばわりとは……総司は頼もしいな。さすが敏の友だ」


「……//別に深い意味はないですけど……」


 沖田のその言葉に姫様がパッと顔を輝かせる。


「そうよ沖田さん!私の友達なのだから、隣に座って座って!」


「えっそれは……」


 と、さすがの沖田も容保様の姿と姫様をチラチラ見比べた。


「……総司。私からも頼む」


 か、容保様!?


 あの容保様が沖田に直々に頼んだ!?

 ありえへん!しかもこの二人、つい最近までバチバチしてなかったっけ?

 

 あれは幻だった??


「……っ!//」


 沖田は胸に再び熱いものが駆け巡るのを感じながら、一礼して姫様の隣に座る。


 その顔は、いつもより誇らしげで……


(なるほどね、認められて嬉しいって感じか。人間らしいところもあるじゃないの)

沖田は敏姫と容保公に「友」と認められて、やっと自分の居場所を見つけることができたようです。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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