僕の居場所はここにある
黒谷に客人として迎えられた土方を見て、沖田が困惑する。
それは沖田も同じはずだったが沖田はズカズカと客間に入っていく。
「……土方さん、何やってるんですか?」
いつのまに来たのだろう。音もなく、気配もなく沖田が私の後ろに立っていた。
なんでいつも気配を消すんだこの男は!
「……屯所はまだ片付いてないでしょう?書きかけの書類もありましたよ」
「……?総司。何をそんなに不機嫌になってるんだ。それに書類は全部認めたぞ」
「……チッ……」
沖田は片手で前髪をくしゃくしゃにすると、やがて何かを思いついたのか、姫様の隣に何食わぬ顔で座った。
「ちょ、ちょっと沖田。沖田は客人じゃないだろう?」
「……あなたのためですよ。先日のことを忘れましたか?」
ああああ思い出した!!確か私は土方さんに見惚れててほぼ何もできなかったんだ!
おかげで姫様の上等のお着物もダメになってしまったし。
ーー確かあの時。
沖田は勝手な動きをする熊二人と、土方さんに見惚れて動けない私の代わりに、包丁を持った姫様を離してくれて……
「お、沖田にも菓子持ってくるわ!!」
そう言って私は慌てて襖を閉めた。
(ああ〜いい男!!まさか土方さんが黒谷に来てくれるなんて!)
とめは足取りも軽く菓子を取りに戻った。
「総司、何故お前が姫の隣に座る?無礼だろう」
沖田は愛刀を腰から抜き、抱きしめるようにして座っている。
「……土方さんが危険だから、守っているんですよ」
「何を?誰から?」
土方は全くわからないと言った調子だ。
「ふふ、沖田さんにはいつも感謝しておりますわ」
敏姫の急な言葉に沖田はひどく動揺した。
「はぁ!?//き、急に何??」
「この間この屋敷でかくれんぼをした時にも、真っ先に沖田さんが見つけてくれたんです」
「そうか。総司は耳が良いからな」
何故か土方が得意げな顔をする。
「はい!だから私の隣に座っていても全然無礼じゃないんです。私達二人は、もうとっくにお友達なのですわ!」
「ぶはっ!ゴホン!いや失礼……!そ、そうか。総司が……」
土方が思わず吹き出してしまった。
今度は沖田が何故か得意げな顔をする。まんざらでもないようだ。
(…………なんだろうこの気持ちは)
『姫様、ちゃんとお前のこと見てるぞ』
いつぞやの永倉の言葉が思い返される。
本当だった……敏姫様はちゃんと僕を見てくれていた。
「……というわけです土方さん」
「ん?」
「……僕の友達に、馴れ馴れしくしないでください」
お友達。
敏姫が何気なく言ったその言葉が沖田の全身を駆け巡り、胸を熱くした。
ーー僕はここに居てもいい。
姫様の隣に居てもいい。
「??おかしな奴だな。俺は馴れ馴れしくした覚えはないぞ」
そう言って土方は、敏姫の湯呑みに茶を注ぎ、菓子を勧めた。極めて紳士的に、まるで普通の事のように。
「まあ。ありがとうございます土方さん」
(そのさりげない気遣いが女性を虜にするのよ〜!!)
いつのまにか戻っていたとめがその様子を見て悶絶していた。
敏姫が沖田の事を『友達』と言ったの、なんか良いですね。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




