血の気も多い副長
土方と離れさせるために、敏姫にわざと野菜洗いを手伝わせようとする沖田。
そんな沖田の気も知らず、浪士達は各々好き勝手にするのだった。
「だから言ったんですよ。土方さんは天然の人たらしだって」
* * *
「……この土はこれを使って落とすんです」
「まぁ、この道具は初めて見ましたわ」
姫様が目をキラキラさせている。
ふと土方の方を見ると、先程の事がなんでもなかったかのように淡々と仕事をこなしている。
「俺も手伝うぜ〜!棘がある野菜もあるからな。姫様の手を傷つけちゃいけねぇ」
酔っ払いの永倉が沖田と姫様の間に割り込んで来た。
あからさまに不機嫌になる沖田。
「……俺も手伝うか。新八、泥のひどい野菜をこっちに寄越してくれ」
斉藤が近場にどっかりと座り、空の桶を永倉に渡す。
「あ、その野菜。私が洗おうと思ってましたのに」
「……ダメですよ。姫様は。汚れ仕事は斉藤さんに任せればいいんです」
「……どういう意味だ」
土方は黙々と調理をし、熊二人は姫様と野菜を洗っている。
いつもは遠くから見ているだけの沖田も、今日は何故か参加していて。
「沖田さん見て!私が洗った野菜、ピカピカになりましたわ」
「…………そう……」
「なんだ総司!照れてんのかぁ!?」
「……永倉さん、斬られたいんですかい?」
笑顔のままで迷いなく鯉口を切る沖田。
「総司!軽々と刀を抜くんじゃねぇ!」
土方の低い怒声が台所に響く。
「……土方さんに言われたくないです」
沖田は拗ねたようにそっぽを向いた。
「喧嘩売ってんのか?」
土方はそう言って、包丁を向けてすごむ。
「……歳三、総司は多分そういうところを言ってるんだと思うぞ」
「はっはっは!鬼の副長は血の気が多くて仕方ねぇや!」
「ふふふ、皆さん面白いですわ」
姫様が小さく笑って。
永倉の豪快な笑いが響く。いつのまにか屯所の台所は、いつもより柔らかい空気に包まれていた。
今さらながらこの状況を純粋に楽しんでいる敏姫様が一番怖いんじゃないかと思えて来ました(笑)
最後まで読んで頂きありがとうございました。




