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もう一度、あなたと。  作者: 杉野仁美
第九章 黒谷に吹く新たな風

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薬売りの虎之助

黒谷にだいぶみんなが馴染んできた頃、ある薬売りの男が荷車を引いてやってきた。

 黒谷のお屋敷ーー正午。敏姫様のお部屋にて。


「……虎之助?」


 敏姫様の洗濯物を運んでいたとめが知り人の姿に足を止める。


「とめ!元気にしてたか!」


「やっぱり虎之助だ!ずいぶん無沙汰だったねぇ!今日はなんだい?また怪しい薬でも売りつける気かぁ?」


「そんな事しねぇよ!お前以外!」


 ーーしばらくの間があって……


「はははは!あんたは相変わらずねぇ!」


「はははは!お前も元気そうで何よりだ!」


「ちょっと待っとくれ、姫様の洗濯物を干してくる」


「あ!そうだ、姫様に用事があったんだ」


 * * *


 場所は変わって黒谷のお屋敷ーー客間。


「これは回復祝いだ。つまらねえもんだが」


 そう言って虎之助が差し出したのは、姫様が好きそうな菓子の詰め合わせだった。


「これはありがたい!きっと姫様は喜んでくれるはずだよ」


 今は屋敷中を駆け回ってるけどね。熊二人とかくれんぼだそうだ。


 あとで私も参加する事になってる。


「それと……これはお前に」


 そう言って虎之助が出して来たのは「灘の酒」上等の酒だ!


「おお〜!ありがたいねぇ!さすが虎之助、わかってる」


「…………//喜んでくれたようでよかったよ。それより本当によかったな。姫様お苦しそうだったもんなぁ」


「……まあね」


 私は苦しそうに咳をする姫様の事を思い出し、慌てて頭を振った。


「でも今は元気で生きてる。私は姫様ができなかった事を、できるだけさせてやりたいんだ。それは容保様も同じ気持ちだ」


 虎之助が湯呑みを持つ手を止める。


「……容保様も、姫様の部屋に足しげく通っていたし。今はお二人共にお元気そうで何よりだ」


 しみじみとそう呟き、茶を飲んだ。


「虎之助……悪いんだけどそろそろ姫様を探しにーー」


 私がそう言って顔をあげた時。


「あれ?今日はあの姫様はいないんですか?」


 いつのまにいたのだろう。沖田総司が私の後ろに立っていた。


虎之助はこの物語のオリジナルキャラです。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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