薬売りの虎之助
黒谷にだいぶみんなが馴染んできた頃、ある薬売りの男が荷車を引いてやってきた。
黒谷のお屋敷ーー正午。敏姫様のお部屋にて。
「……虎之助?」
敏姫様の洗濯物を運んでいたとめが知り人の姿に足を止める。
「とめ!元気にしてたか!」
「やっぱり虎之助だ!ずいぶん無沙汰だったねぇ!今日はなんだい?また怪しい薬でも売りつける気かぁ?」
「そんな事しねぇよ!お前以外!」
ーーしばらくの間があって……
「はははは!あんたは相変わらずねぇ!」
「はははは!お前も元気そうで何よりだ!」
「ちょっと待っとくれ、姫様の洗濯物を干してくる」
「あ!そうだ、姫様に用事があったんだ」
* * *
場所は変わって黒谷のお屋敷ーー客間。
「これは回復祝いだ。つまらねえもんだが」
そう言って虎之助が差し出したのは、姫様が好きそうな菓子の詰め合わせだった。
「これはありがたい!きっと姫様は喜んでくれるはずだよ」
今は屋敷中を駆け回ってるけどね。熊二人とかくれんぼだそうだ。
あとで私も参加する事になってる。
「それと……これはお前に」
そう言って虎之助が出して来たのは「灘の酒」上等の酒だ!
「おお〜!ありがたいねぇ!さすが虎之助、わかってる」
「…………//喜んでくれたようでよかったよ。それより本当によかったな。姫様お苦しそうだったもんなぁ」
「……まあね」
私は苦しそうに咳をする姫様の事を思い出し、慌てて頭を振った。
「でも今は元気で生きてる。私は姫様ができなかった事を、できるだけさせてやりたいんだ。それは容保様も同じ気持ちだ」
虎之助が湯呑みを持つ手を止める。
「……容保様も、姫様の部屋に足しげく通っていたし。今はお二人共にお元気そうで何よりだ」
しみじみとそう呟き、茶を飲んだ。
「虎之助……悪いんだけどそろそろ姫様を探しにーー」
私がそう言って顔をあげた時。
「あれ?今日はあの姫様はいないんですか?」
いつのまにいたのだろう。沖田総司が私の後ろに立っていた。
虎之助はこの物語のオリジナルキャラです。
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