淡紅のかんざし
容保様とのデートの途中。敏姫はあるお店で足を止める。
※とめ視点です。
ふと、姫様の足が止まった。
何かお気に召すものがあったのかな?
私は気になって、二人のご様子をもう少し見ることにした。
「……あら」
小さな店先。
色とりどりのかんざしが、陽の光を受けて静かにきらめいている。
「綺麗……」
「どうぞ、お手にとってご覧ください」
店主が柔らかく笑う。どうやら姫様とは気付いてないみたいだ。
当然か。一国の主とその姫様が、二人だけで市井に出ているだなんて話、信じられないだろう。
とはいえ二人とも上等の着物を着ているから、目立つんだよね。
先程からすれ違う人たちにチラチラ見られてるもの。気付いてないのはお二人だけ!
「……では、少しだけ」
姫様は数あるかんざしの一つを手に取る。
淡い色の花を模した、控えめなかんざし。
「……軽いのですね」
「……これがそなたに似合いそうだ」
不意に落ちた言葉に、姫様の手が止まる。
「……え?」
容保様の視線は確かに姫様の方に向いていて。
しばらくの沈黙のあと、容保様は姫様が見ていたのとは別のかんざしの一つを手に取った。
白に近い淡紅の花。
華美ではないが、どこか凛としている。
「……それを買おう」
店主に差し出す。
「えっ……あの……殿……?」
「……敏の黒髪に映えそうだ」
容保様のその言葉に、姫様は恥ずかしそうに俯く。
「そんな……もったいのうございますわ//」
姫様は戸惑いながら首を振っているけど、めちゃくちゃ嬉しそう。
「私はただ見ていただけで……殿に買ってもらおうだなんて……」
「……私が敏に贈りたいのだ」
「殿……//」
侍女がそっとかんざしを受け取り、敏姫の後ろに回る。
「失礼いたします」
髪に差し込まれる感触。それは軽いはずなのに、不思議と確かな重みを感じて。
二人が一緒にかんざしを選んでいる光景が浮かびます。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




