敏姫と蛍と容保と浪士組
川辺に着くと、斉藤と永倉の二人と沖田が特等席を用意して待っていた。
「殿!敏姫様!こっちですぜ!」
知らせを聞きつけたのか、新撰組の永倉新八と、斎藤一、それに何故か沖田総司がそこにいて。
二人用の特等席を用意して待っていた。
「……ここなら姫様の着物も汚れないだろう」
斉藤が茶屋の縁台を借りてきたようで、ぽんぽんと縁台を軽く叩く。
「まあ、熊さん……ありがとうございます」
「それにしてもすげーなその着物!なんつーかこう、涼しげで」
「……新八。余計なことを言うな」
「儚げなのに、生命の力を感じますね」
声のした方を見ると、そこには沖田が目を丸くして立っていた。
「……まるで、敏姫様そのものみたいだ」
「えっ?そ、そうですか?殿にも同じ事を言われましたわ」
「……似合ってる」
沖田がそう言って姫様の着物に触れようとした。ちょっと何やってんのよ!
容保様がいらっしゃるのよ!いくら容保様がお優しいとはいえそんな……
「総司……ありがとう。敏を褒めてくれて」
浪士組よりも私よりも誰よりも早く、沖田の手を止めたのは容保様だった。
容保様は笑顔だったが、その後ろには不動明王も飛んで逃げるほどの炎が浮かんで見えた。
(これ絶対怒ってるやつじゃん!『私の敏に気安く触るな』って!)
普段怒らない人が怒ったら怖いってあれほどーー
沖田はハッと気付いて慌てて手を引っ込める。
「……僕は、着物を褒めただけですよ……」
バツが悪そうに沖田は首の後ろをかいた。
「はっはっは!総司はどうやら姫様の美しさに当てられたようだなァ!」
「……永倉さん、斬られたいんですかい?」
沖田は笑顔のままチャキッと物騒な音を立てる。
話が進まない!
「はいはいそこまで!みんな姫様の着物じゃなくて蛍を見にきたんでしょ!姫様、せっかく斉藤が用意してくれたからどうぞ」
いつのまにか私がこの混沌とした中を仕切っていた。
いやそこは斉藤だろ!
と思って斉藤を見ると、蛍が出現するのを待っているのか、川辺に佇んでいた。
永倉は酒を持って来て一人で宴会を催している。
沖田はいつのまに移動したのか、木に寄りかかってこちらの様子を伺っていた。
こっ、この浪士ども……好き勝手に行動しやがって……
この浪士組の自由人加減が好きです。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




