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もう一度、あなたと。  作者: 杉野仁美
第八章 敏姫と屯所と

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敏姫と蛍と容保と浪士組

川辺に着くと、斉藤と永倉の二人と沖田が特等席を用意して待っていた。

「殿!敏姫様!こっちですぜ!」


 知らせを聞きつけたのか、新撰組の永倉新八と、斎藤一、それに何故か沖田総司がそこにいて。


 二人用の特等席を用意して待っていた。


「……ここなら姫様の着物も汚れないだろう」


 斉藤が茶屋の縁台を借りてきたようで、ぽんぽんと縁台を軽く叩く。


「まあ、熊さん……ありがとうございます」


「それにしてもすげーなその着物!なんつーかこう、涼しげで」


「……新八。余計なことを言うな」


「儚げなのに、生命(いのち)の力を感じますね」


 声のした方を見ると、そこには沖田が目を丸くして立っていた。


「……まるで、敏姫様そのものみたいだ」


「えっ?そ、そうですか?殿にも同じ事を言われましたわ」


「……似合ってる」


 沖田がそう言って姫様の着物に触れようとした。ちょっと何やってんのよ!

 容保様がいらっしゃるのよ!いくら容保様がお優しいとはいえそんな……


「総司……ありがとう。敏を褒めてくれて」


 浪士組よりも私よりも誰よりも早く、沖田の手を止めたのは容保様だった。


 容保様は笑顔だったが、その後ろには不動明王も飛んで逃げるほどの炎が浮かんで見えた。


(これ絶対怒ってるやつじゃん!『私の敏に気安く触るな』って!)


 普段怒らない人が怒ったら怖いってあれほどーー


 沖田はハッと気付いて慌てて手を引っ込める。


「……僕は、着物を褒めただけですよ……」


 バツが悪そうに沖田は首の後ろをかいた。


「はっはっは!総司はどうやら姫様の美しさに当てられたようだなァ!」


「……永倉さん、斬られたいんですかい?」


 沖田は笑顔のままチャキッと物騒な音を立てる。


 話が進まない!


「はいはいそこまで!みんな姫様の着物じゃなくて蛍を見にきたんでしょ!姫様、せっかく斉藤が用意してくれたからどうぞ」


 いつのまにか私がこの混沌とした中を仕切っていた。


 いやそこは斉藤だろ!

 と思って斉藤を見ると、蛍が出現するのを待っているのか、川辺に佇んでいた。


 永倉は酒を持って来て一人で宴会を催している。


 沖田はいつのまに移動したのか、木に寄りかかってこちらの様子を伺っていた。


 こっ、この浪士ども……好き勝手に行動しやがって……


この浪士組の自由人加減が好きです。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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