敏姫と生命(いのち)
先日の屯所にて、結局着物をダメにした敏姫。
新しい着物に袖を通した途端に……
会津藩 黒谷のお屋敷ーー敏姫の部屋にて。
先日の屯所での洗濯のおかげで姫様の上等の着物がダメになってしまった。
急いでお世話になっている呉服屋に作らせた着物は、涼やかな淡藤色の生地に、裾にはささやかな水紋と白金魚、帯には大きな白金魚が泳いでいる柄だ。
その儚さと同時に生命の輝きを感じさせる色と柄はまるで敏姫様そのもののようで。
私は出来上がりを見てしばらくうっとりしたもんだ。
その出来立てホヤホヤの着物に姫様が袖を通した時ーー
「ねぇとめ!今夜川辺で蛍を見に行きたいわ!」
これには頭がクラクラしましたね。ええ、さすがに。
「絶対ダメです!!蛍はまだいいです。夜の!それも川辺なんて言語道断です!」
私は食い気味で答えた。
「お召し物が汚れるに決まってます!せっかくおろしたてなのに」
「川には入らないから!ね!お願い」
「いいえ。今日ばかりは姫様のわがま……言うことは聞きません!」
「お願いとめ〜」
私たちが言い合いをしていると、そこへ容保様がやってきた。
「か、容保様!」
「えっ!殿!?」
「……二人とも何を言い争っていたのだ。敏、その着物は……」
姫様は容保様のその言葉を聞き、どうですか?と言うようにくるりと回ってみせた。
「……美しいな。まるで敏自身のようだ」
「…………//」
……はいはい。姫様を黙らせることができるのはいつだって容保様って決まってんだ。
私はため息をついて襖を閉めた。
蛍は田舎に住んでいた時に川辺にて見たことがありますが、まるで夜空の星々の光が動いているようで美しかったのを覚えています。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




