どうしてこんなに楽しそうなんだ
一生懸命に浪士たちの着物を洗濯するあまり、鼻先に泡をつけたまま作業する敏姫。
その姿はとても楽しそうでーー
「感じ悪ぃな総司〜」
永倉がにやにやしながら言う。
「本当は混ざりたいくせに」
「……は?」
「姫様に誘われて嬉しかったんだろ?」
「永倉さん、斬られたいんですか?」
沖田が笑顔で刀に手を当てる。怖い怖い怖い!
永倉もなんでそんな平然としてるの??
(ん……?)
沖田の耳が、ほんの少しだけ赤かった。
(あれ?もしかして図星だった?)
斎藤も気づいたらしく、ふ、と肩を揺らしている。
「……総司」
「何ですか斉藤さん」
「顔」
「……//」
沖田は無言で顔を背けた。
その様子を見た姫様が、不思議そうに首を傾げる。
「沖田さん?」
「……何でもありません」
「そうですの?」
姫様は納得してない様子だったが、すぐまた洗濯に戻った。
ぱしゃぱしゃ。
ごしごし。
「きゃっ」
勢い余って水が跳ねる。
「あああああ!!」
私は頭を抱えた。
「姫様のお高いお着物がぁぁ!!」
泥水が跳ねている!
浪士どもの泥と汗と血みたいな汚れがぁ!!
「だ、大丈夫ですわとめ!」
「大丈夫じゃないんですってば!!」
「ほら姫様、泡ついてますぜ」
永倉が笑いながら手ぬぐいを差し出す。
「え?」
「鼻」
「……っ//」
敏姫様が慌てて鼻を押さえた。
「ふふ……」
思わず笑ったのは斎藤だった。
「……姫様、子どもみたいだな」
「一、お前が笑うなんて珍しいな!」
「……悪い、つい……」
だが全然悪いと思っていない顔でまた笑う。
そしてそんな騒がしい光景を。
沖田だけが少し離れた場所から静かに見ていた。
(……なんなんだろうな、この人は)
泥だらけになって。
泡だらけになって。
浪士達の汚い着物を洗って笑って。
自分の着物が汚れるのも構わずに。
それなのに。
どうしてこんなに――
「……楽しそうなんだ」
ぽつりと呟く。
その声は、誰にも聞こえなかった。
少しずつ、沖田の内面にも変化が訪れています。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




