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もう一度、あなたと。  作者: 杉野仁美
第八章 敏姫と屯所と

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浪士の着物をお洗濯

会津藩主松平容保の御正室、敏姫様は浪士たちの洗濯物に悪戦苦闘していた。

「大丈夫ですわ!」


「大丈夫じゃないんですよぉ!!」


 しかし姫様はもう止まらない。


 ぱしゃん、と桶の水に手を入れる。


「きゃっ、冷たい!」


「ははは!最初はそうですよ姫様!」


 永倉が笑う。


「まずはこうやって揉むんです」


「こう……?」


 敏姫様は見よう見まねでごしごしと洗い始めた。


 ……だが、全然力が入っていない。揉むというよりも撫でているに近い。


「す、すみません」


「はっはっは!まあ最初はそんなもんです」


 台所に永倉の大笑いが響いた。


 斎藤はというと。


「……そこはもっと力を入れる」


 無表情のまま、妙に丁寧に教えている。


「こうですの?」


「……ああ」


(なんなのこの光景……)


 私は頭を抱えた。


 会津藩ご正室が。

 黒谷のお姫様が。


 浪士組の男たちに囲まれて浪士どもの着物を洗っている。


「終わった……もう全部終わった……」


「とめ、大袈裟ですよ。それにこの着物。上等のものもありますよ」


「大袈裟じゃありません!!上等とかそういう問題でもありません!」


 その時。


「……楽しそうですね」


 沖田が柱にもたれたまま、ふっと笑った。


 相変わらず手伝う気は一切ないらしい。


「沖田さん!」


 姫様がぱっと顔を上げたその拍子に、ぷくっと鼻に泡がついた。


「……」


(姫様ぁ!!)


 本人は気づいていない。


「沖田さんもどうですか?」


 にこにこしながら誘う姫様。


 沖田は少しだけ目を洗濯物に向けると。


「僕はそんな汚れ仕事しません」


 ぴしゃりと言った。


「ええっ?」


「洗濯なんて隊士にやらせればいいでしょう」


 そう言って沖田はそっぽを向いた。

会津藩預かりの新撰組のあの特徴的な羽織も、人数分用意するとなるとかなりの出費だったようです。

あの特徴的な羽織りは実戦向きではなく、「目立つためだけに作られた」着物だったようです。

確かに目立つし、かっこいいですよね。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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