沖田は自分を見てほしい
竹刀の打ち合いで沖田から一本を取った永倉。
沖田は永倉に疑問を投げかける。
「……永倉さん」
沖田が低く呟く。
その目はまだ荒れている。
だがさっきまでのような、危うい殺気ではない。
「なんだ?」
竹刀を肩に担ぎながら永倉は答える。
「……何でそんなに落ち着いてるんです?」
「は?」
「僕はこんなにイラついてるのに……」
永倉はぽりぽりと頭を掻いた。
「そりゃあお前」
竹刀を下ろしながら笑う。
「姫様が楽しそうだからだろ」
「……」
「前にも言ったろ。あの方は今、生き直してる最中なんだよ」
永倉の声は、思っていたよりずっと静かだった。
「俺は、姫様がしょげてるより、笑ってる方がいい」
「……」
「お前もそうなんじゃねぇの?」
沖田の瞳が揺れる。
「違います」
即答だった。だが。
「……違う、はずです」
今度は少し弱かった。
永倉はその言葉を聞いて、ふっと笑う。
「総司」
「……」
「お前、姫様に怖がってほしいんじゃなくて」
永倉が沖田に一歩近づく。
「『自分を見てほしい』だけじゃねぇの?」
その瞬間、沖田の目が大きく見開かれた。
「…………は?」
「図星か」
「違ッ……!」
否定しかけて、沖田は言葉を失う。
頭の奥で、敏姫の顔がちらつく。
『沖田さんの気持ち、なんとなくわかります』
『悪い人には見えませんわ』
『沖田さんも、私を守るためにいるのでしょう?』
「…………」
わからない。
わからないのに。
胸の奥が、妙に熱い。
永倉はそんな沖田を見て、にやりと笑った。
「ま、安心しろ」
竹刀を肩へ担ぎ直す。
「姫様、ちゃんとお前のこと見てるぞ」
「……っ」
その言葉に。
沖田は何故か、先程よりずっと強く動揺していた。
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