受け止める永倉
沖田のやり場のない感情を受け止めるために竹刀を差し出した永倉。
沖田は遠慮なく打ち込むが……
「おう。若造の八つ当たりくらい、受け止めてやるよ」
永倉はにやりと笑った。
その軽い態度が、今の沖田には癪に障る。
――ダンッ!!
次の瞬間。
沖田が地を蹴った。
速い。
屯所の浪士たちが息を呑む。
それはまるで風のような踏み込みでーーとても肉眼でとらえる事はできない。
「っ!」
バシィン!!
道場に鋭い音が響く。
だが。
「おせぇ」
永倉は真正面から受け止めていた。
沖田の眉がわずかに動く。
「……へぇ」
「どうした総司、その程度か?」
永倉は笑っている。
だが、その足は微動だにしていない。
(……硬い)
沖田は奥歯を噛み締めた。
斎藤一とは違う。
斎藤は流す。
躱す。
最小限で捌く。
だが永倉は。
――受ける。
真正面から。
まるで大木のように。
しかも全然倒れない。
引かない。
力は込めているはずなのにビクともしない。
「はぁっ!!」
バシン!バシン!!
沖田の打ち込みが加速する。
面。
胴。
突き。
鋭く、速く、容赦がない。
普通の相手なら、とっくに竹刀を落としている。
だが。
「おらァ!」
ガンッ!!
永倉の一撃が、逆に沖田の竹刀を弾き返した。
「……ッ!」
沖田が数歩下がる。
「力みすぎだ」
永倉が竹刀を肩に担ぐ。
「姫様のこと考えすぎなんだよ」
「……ッ、うるさい!!」
再び沖田が飛び込む。
今度は低い。
まるで獣のような踏み込み。
「はっ!!」
鋭い突きを放つ。
ーーしかし。
「甘ぇ!」
バシィ!!
永倉の竹刀が横から叩き込まれた。
沖田の竹刀が大きく逸れる。
(しまっ……)
その隙に。
トン。
永倉の竹刀が、沖田の額へ軽く当たった。
「一本」
「…………」
屯所が静まり返る。
沖田総司に、真正面から一本を取る。
それがどれほど異常なことか、皆知っていた。
沖田の八つ当たりを全て受け止める永倉、かっこいいです。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




