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もう一度、あなたと。  作者: 杉野仁美
第六章 新撰組と敏姫

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熊二人と容保

夜更けの黒谷の一室。容保は斉藤と永倉を部屋に呼んでいた。

 夜更けの黒谷ーー


 人の気配もまばらになった頃。


 会津藩・黒谷のお屋敷の一室では、静かに碁石の音が響いていた。


 ――コト……


「……」


 盤を挟んで向かい合うのは、松平容保と斎藤一。


 その少し離れた場所では、永倉新八が胡座をかいて酒を呑んでいた。


「いやぁ〜、今日は笑わせてもらいましたよ」


 永倉が盃を揺らしながら豪快に笑う。


「姫様の忍び足!」


「……」


 斎藤は無言のまま石を置いた。


「……あれでも敏は本気だったのだ」


 容保が少し困ったように眉を下げる。


「……だからこそ、気づかぬふりをした。私を驚かせようとする姿が健気でな……」


「そりゃあそうでしょうよ。あんな嬉しそうな顔されちゃあなぁ」


 永倉が酒をあおる。


「『殿、驚きました?』でしたっけ?」


「……っ//」


 容保の耳がわずかに赤くなった。


「……新八」


「いやいや、俺でもあれは褒めますって」


「……俺も褒める」


 斎藤が静かに言った。


「……敏姫様は嬉しそうだったな」


「だろ?だからいいんですよ」


 永倉はからからと笑う。


 その様子に、容保はふっと小さく息を吐いた。


「……二人とも」


 碁石を指先で撫でながら、静かに言う。


「私の芝居に合わせてくれて、ありがとう」


 部屋が少し静かになる。


「……芝居というほどではありません」


 斎藤が答えた。


「姫様が楽しそうなら、それでいい」


「そうそう。姫様、最近よく笑うじゃないですか」


 永倉も続ける。


「前は床に伏せってたんでしょう?だったら今くらい好きに笑ってもらわねぇと」


「……ああ」


 容保の目元がわずかに和らぐ。


 敏姫が笑う。


 それだけで、この広い屋敷が温かくなるようだった。

忍び足実践の、その後の話でした。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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