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もう一度、あなたと。  作者: 杉野仁美
第六章 新撰組と敏姫

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沖田だけは違う温度

すっかり忍び足が成功したと思い込んでいた敏姫だったが……

 姫様は褒められて嬉しかったのか、頬を赤く染めて俯いてしまった。


 その光景に、永倉が満足げに拍手をした。


「すげえ!」


「……見事だったな」


 斉藤もうんうんと頷いている。


(いやいやいや!!)


 私は呆れて思わず顔を塞ぐ。


 ーーその時。


「……全然できてませんよ」


 その声に場の空気が凍った。

 振り返ると沖田が、いつのまにか柱の影に立っていた。


「足音、最初から最後まで全部聞こえてましたし。むしろ『今から行きますよー』って言ってるみたいでしたね」


「……え?」


 敏姫様が固まる。


「総司」


 低く斎藤が呼ぶ。


「余計なことを言うな」


「事実です」


 沖田はそうあっさり返す。


「……でも」


 沖田は首の後ろをさすりながら言いにくそうに口を開く。


「……それでも気づかないふりをする人がいるならーー」


 そう言うと沖田は容保を見る。


「それはそれで成立するんじゃないですかね……」


「……」


 容保は何も言わない。

 ただ、静かに敏姫の頭を撫でていた。


「……よくやった」


 容保様のその一言で、敏姫様は、ほっとしたように微笑んだ。


「はい!」


(あーもう、何か全部もういいや)


 私は小さくため息をついた。


 結局はこの人たち、全員姫様に甘いんだわ。

 ……一人を除いては。だけど。


「……変なの……」


 沖田総司だけが、違う温度で(くすぶ)っていた。


沖田だけはまだ距離を押し測っている様子ですね。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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