忍び足講座
敏姫は何故容保公や永倉、斉藤の足音がしないのか疑問に思っていた。その疑問に沖田が笑い……
庭の一角ーー
開けた場所に、すでに二つの影があった。
「来たか総司」
低い声と共に振り返ったのは、斎藤一。
その隣では、腕を組んだ永倉新八がこちらに気づいてにやりと笑う。
「お、姫様じゃねえですか!どうしたんです?」
姫様はそれを聞いて瞳を輝かせた。
「今日はね、忍び足を教えていただきたくて!」
「忍び足?」
永倉が目を丸くする。
その横で斎藤が、すっと目を細めて沖田に視線を向けた。
「……総司」
「僕じゃないですよ」
いやいや、誘ってたじゃん!見に行きますか?って!
「姫様が興味を持っただけです」
「……そうか」
斉藤の目が一瞬こちらに向けられた。その目は「わかっている」と言いたげだった。
不思議だけど、この中では斉藤が一番まともに見えるかも……剣のことになると見境がなくなるけど。
「まあいいじゃねえですか!姫様がやりたいってんなら!」
永倉がぱん、と手を打つ。
(あー嫌な予感嫌な予感。沖田もそうだけど、永倉新八も大概だからね??)
「ありがとうございます」
姫様は笑ってるけどさぁ〜……こいつら何がきっかけでリミッターが外れるかわかったもんじゃ……
私がごちゃごちゃ考えていると、沖田がこちらを冷たい目で見ていた。
冷たい、なんの感情も読み取れない目で。
私はゾーッと背筋に冷たいものが走るのを感じた。
(ひー!怖い怖い!このゾッとするような気配を気にもしないってんだから姫様はある意味最強だよ)
「よーし、今日は特別に忍び足講座だ!」
講座って何だい。永倉って時々教師みたいになる時があるなぁ。
「まずはですねーー」
永倉が大げさに足を上げる。
「こう、どすん!どすん!って歩くのはダメです!」
「……それは誰でもダメだろう」
斎藤がぼそりと突っ込む。
「大事なのは『静かに、ゆっくり』です!」
「静かに……ゆっくり……」
敏姫様が真剣な顔で頷く。
(嫌な予感しかしないけど……)
「やってみてください!」
「はい!」
ーーとん
ーーぺた
ーーぱたん
「……」
「……」
(めちゃくちゃ音してるーーー!!)
「おしい!」
永倉が笑う。
姫様に忍び足は難しそうですね。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




