こっちに来て、はじめさん
書院に着くと斉藤は早速布団を敷いておときを横たえさせたが、おときは斉藤にもっとそばに来て欲しいらしく……
斉藤は敷き布団を用意し、そこにおときを横たえさせ、綿入れをかけた。
新撰組は基本的に金がなかったが、斉藤は永倉と同様に御所警備の報酬として特別に容保公から上等の敷き布団と上等の綿入れを賜っていた。
「まさかこんな時にこの布団が役立つとはな……」
「うふふ、この綿入れ小太郎さんのより暖かいです。師匠の匂いがするからでしょうか?」
おときは綿入れの中を転がりながらすんすんと綿入れの匂いを嗅ぐ。
「…………//おとき、そんな事を言うな……」
「いえ。言います……はじめさん」
斉藤はおときが横になっている布団から少し距離をとり、文机のある方へと足を向けた。
「……はじめさん、もっとこちらに来てください」
おときが呼びかけたが、斉藤はそこから微動だにしなかった。
「いや、おとき……お前はまだ本調子ではないだろう。それに姐さんとの約束もある」
『おときを頼んだよ』
おとめのあの言葉は、おときをなるべく静かに休ませて、という事だと斉藤は解釈していた。
さわさわという風の音と、池の鯉がぱしゃんと跳ねる音だけが書院に満ちる。
「もぉ、いいからこっちに来てください!今はお姉様のことはいいんです!」
「…………」
斉藤はしばらく腕を組んでおときを見下ろしていたが、やがてそろそろとおときの呼びかけに応じた。
「……どうした。どこか痛むのか?」
三条で豹魔と戦った折、おときに怪我はないのをとっくに知っていたというのに。
斉藤は照れを隠そうとおかしなことを聞いた。
「いえ、そうじゃありません。はじめさん、もっと寄ってください」
斉藤は黙っておときの布団の側に座った。
しばらく斉藤さんとおときの攻防が続いてイライラするかもしれない(私が)
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