はじめさんの書院
「はじめさん」
斉藤が小屋に入るなり、おときは目を輝かせて顔を挙げた。
「……おとき」
斉藤はおときの小さな手を握り、心から安心したように微笑んだ。
「おとき、もう大丈夫だ。ここは屯所だし、何かあれば隊士たちも起きてくるし、それに姐さんも小太郎もいるし。そうだ、何か温かいものはいるか?小太郎にお湯をもらってき……」
「くすくす、はじめさんたら……お喋りさんですね。普段はだんまりなのに」
体が温まり、いくらか顔色が良くなってきたおときは三条から帰ってから初めて笑った。
「お、おとき……」
久しぶりのおときの笑顔を見た斉藤はたまらなくなっておときを抱きしめた。
「はじめさん……もう私は大丈夫です……ありがとう」
おときは斉藤にしがみつきながら、いつものように斉藤の腰におでこをぐりぐりと擦り付けた。
(本当にもう大丈夫なんだな……おとき……)
斉藤はホッと息を吐きながら、そのおときの所作に目を細めた。
「そ、それであの……言いにくいことなんですけど……」
「なんだ?もっと綿入れが必要か?」
「いえ、そうではなくて……」
「???」
* * *
壬生屯所内・斉藤の書院にてーー
おときが『斉藤の書院に行きたい』と言い、斉藤はおときを抱き抱えて書院に連れて来た。
おとめには散々文句を言われた。
「どうしてまだ体調が万全じゃないおときをどこかへ連れて行こうとするんだい!?」
「……」
斉藤はおときを抱き抱えたまま困ったように黙っていた。おときが頼んだからと言えばいいのに言わなかった。
「……お姉様、私がどうしてもと頼んだんです。はじめさんの書院に連れて行ってほしいと……だから……」
「ああそう!じゃ最初から斉藤がそう言えばいいじゃないか。全くこんな時までだんまりかい!」
「……すまない。どう言って良いかを考えていた」
斉藤はそう言って自身の髪をぐしゃぐしゃとした。
「……さっさと行きな。……それと、おときを頼んだよ」
「……うむ」
おとめさんに捲し立てられる斉藤さん好きです。
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