はじめさんに会いたい
おとめは斉藤におときを会わせたくなかったが……
おとめの言う事はあながち間違いではなかった。おとめは豹魔の事も、いかに豹魔が危険な男だという事も小太郎に聞いて知っていたからだ。
「…………」
おとめの言葉を聞き、おときはしばらく深く息をついた。
「……このかんざしは、はじめさんが私に贈ってくれた物なんです。私のために、私を想って……」
「……ッ!」
その言葉を聞いて、おとめは胸がはち切れそうになった。
(斉藤……あんたって男は……)
斉藤は何もしてなかったんじゃない。
気付くのも遅くなかった。
むしろ、ずっと前からおときの側にいて、おときの好きな物、可愛い物、綺麗な物に目移りしやすい事、おときが危なっかしい事。
全部全部知っていて。
それでもおときの浮かれた心だけは止められなくて。おときが先走っただけで……
「……おとき。お前はなんて馬鹿な子なんだい……」
おとめの目から大粒の涙が溢れ、おときを握る手に力がこもる。
「お姉様……私、はじめさんに会いたいです……」
そうおときに言われて、おとめは短くため息をついた。
「……」
おとめは何も言わずに小屋を出、小屋の前でまだウロウロしている斉藤に声をかけた。
「……斉藤」
びくりと斉藤の肩が揺れた。普段は頼りになる背中が、今はとても弱々しく見えた。
「……おときが呼んでる。私じゃ力不足なんだとさ」
実際にはおときはそんな事は言っていない。
おとめは斉藤が悪くない事はわかっていても、何か嫌味を言いたかったのだ。
「そうか……ありがとう。姐さん」
「斉藤」
瞬間、おとめが斉藤を呼び、早足で小屋に行こうとする斉藤を止めた。
「おときは今弱ってるんだ。何かしたらただじゃおかないよ」
それは、もはやおとめの精一杯の啖呵だった。
どんなにおとめがおときを心配しようと、斉藤には敵わない。
『お姉様……私、はじめさんに会いたいです……』
あのおときの一言で、おとめにはわかっていた。
今のおときには斉藤が必要なのだと。
「……」
斉藤は無言でおとめに頭を下げて小屋に行く足を早めた。
おとめさん!( ; ; )おとめさんが力不足というわけじゃないんです。
それでも今おときが会いたいのは斉藤さんなわけで……
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