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もう一度、あなたと。  作者: 杉野仁美
第四十三章・おとめとおときと斉藤と

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番外編・神保修理のゆううつ・祇園編②

引き続き息抜きの番外編です。

 対する容保は、今夜が初めての祇園。

 だが、本人はまったく引く気がなかった。


「俺は正統派のイケメン、お前はお色気担当のイケメン。どっちが勝っても面白いじゃないか!」


「…………」


「…………」


 斉藤は無言で目を伏せた。


(……殿は何を仰っているのだ?やはり敏姫様の時のように何か不思議な力が働いているのか?)


 斉藤はこのような時にも至極真面目であった。

 顔色一つ変えず頭の中で色々冷静に考えていた。


 土方はというと、肩を震わせていた。笑いを堪えているのかと思いきや。 


「なるほど。正統派とお色気担当ですか」


「そうそう!」


「では、私はお色気担当として、正々堂々と勝負させていただきましょう」


「おう! 望むところだ!」


 二人はなぜか、固い握手を交わした。


(いや、なぜそこで握手を交わす??)


 斉藤は内心で突っ込んでいた。


「では、まずは私から」


 土方は芸妓たちに向き直り、慣れた仕草で微笑んだ。


「皆さん、今宵は素晴らしい舞をありがとうございます。よろしければ、後ほど一筆いただけると嬉しいのですが」


 芸妓たちが、くすくすと笑う。


「あら、土方様ったら」

「お上手でいらっしゃること」

「まあ、そんなことを言われたら、書かずにはいられませんわね」


 土方、早くも一歩リード。


「ぐぬぬ……!」


 容保は悔しそうに唸った。


「よし、次は俺だ!」


「殿、今少し待ってくだ……」


 斉藤が止める間もなかった。


 容保は背筋を伸ばし、芸妓たちに向かって、にっこりと微笑んだ。


「皆、今宵は美しいな」


 芸妓たちが、ぴたりと動きを止めた。


「……え?」 


「いや、舞も素晴らしい。だが、それ以上に、皆の笑顔が美しいと思ってな」


「…………」


「俺はこういう場所に来るのは初めてだが、今夜は来てよかったと思っている」


 そして片目を閉じる。俗に言うウインクである。


 ーー次の瞬間。


「まあああ!片目を閉じた瞬間にハートが出てきましたわ!」

「今の瞬間もう一度やってくださらない?写真に残しますわ!」

「イケメンからのウインク……うーん、昇天!」


 芸妓たちの顔が、みるみるうちに赤くなった。

 土方の笑顔が、わずかに引きつる。


「……へえ。初めてにしてはなかなかやりますね」


 容保は得意げに胸を張った。


「どうだ、土方。正統派の力を見たか!」 


「……まさか片目を閉じただけで虜にするとは……」


「だろう?」


 斉藤は、そっと天井を仰いだ。


(ダメだ。今宵の殿を止めることはできない。敏姫様、どうかお許しください)


 その時だった。

番外編なのに長くなっちゃった。

そのうち終わると思います。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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