番外編・神保修理のゆううつ・祇園編②
引き続き息抜きの番外編です。
対する容保は、今夜が初めての祇園。
だが、本人はまったく引く気がなかった。
「俺は正統派のイケメン、お前はお色気担当のイケメン。どっちが勝っても面白いじゃないか!」
「…………」
「…………」
斉藤は無言で目を伏せた。
(……殿は何を仰っているのだ?やはり敏姫様の時のように何か不思議な力が働いているのか?)
斉藤はこのような時にも至極真面目であった。
顔色一つ変えず頭の中で色々冷静に考えていた。
土方はというと、肩を震わせていた。笑いを堪えているのかと思いきや。
「なるほど。正統派とお色気担当ですか」
「そうそう!」
「では、私はお色気担当として、正々堂々と勝負させていただきましょう」
「おう! 望むところだ!」
二人はなぜか、固い握手を交わした。
(いや、なぜそこで握手を交わす??)
斉藤は内心で突っ込んでいた。
「では、まずは私から」
土方は芸妓たちに向き直り、慣れた仕草で微笑んだ。
「皆さん、今宵は素晴らしい舞をありがとうございます。よろしければ、後ほど一筆いただけると嬉しいのですが」
芸妓たちが、くすくすと笑う。
「あら、土方様ったら」
「お上手でいらっしゃること」
「まあ、そんなことを言われたら、書かずにはいられませんわね」
土方、早くも一歩リード。
「ぐぬぬ……!」
容保は悔しそうに唸った。
「よし、次は俺だ!」
「殿、今少し待ってくだ……」
斉藤が止める間もなかった。
容保は背筋を伸ばし、芸妓たちに向かって、にっこりと微笑んだ。
「皆、今宵は美しいな」
芸妓たちが、ぴたりと動きを止めた。
「……え?」
「いや、舞も素晴らしい。だが、それ以上に、皆の笑顔が美しいと思ってな」
「…………」
「俺はこういう場所に来るのは初めてだが、今夜は来てよかったと思っている」
そして片目を閉じる。俗に言うウインクである。
ーー次の瞬間。
「まあああ!片目を閉じた瞬間にハートが出てきましたわ!」
「今の瞬間もう一度やってくださらない?写真に残しますわ!」
「イケメンからのウインク……うーん、昇天!」
芸妓たちの顔が、みるみるうちに赤くなった。
土方の笑顔が、わずかに引きつる。
「……へえ。初めてにしてはなかなかやりますね」
容保は得意げに胸を張った。
「どうだ、土方。正統派の力を見たか!」
「……まさか片目を閉じただけで虜にするとは……」
「だろう?」
斉藤は、そっと天井を仰いだ。
(ダメだ。今宵の殿を止めることはできない。敏姫様、どうかお許しください)
その時だった。
番外編なのに長くなっちゃった。
そのうち終わると思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




