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もう一度、あなたと。  作者: 杉野仁美
第五章 恐れる心と力

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黒谷に行けばきっと……

沖田は屯所で荒ぶっていた。そこへ山南が現れて沖田の話を聞くが……

 沖田の手でバラバラになった藁束を片付けながら山南は口を開く。


「……総司くんにとって、敏姫様はこの藁束みたいな物ですか?」


 山南に指摘されて、初めて沖田は自分のしたことに気付いたようだった。


 スパッと切れた藁束もあれば、切り口が荒い藁束もある。いずれにしてもそれは酷い有様だった。


 山南は沖田に、敏姫もこの藁束のように扱っていいのかと暗に聞いてきたのだ。


 沖田はそういう男だとわかって山南は聞いて来た。


 人と物の区別ができないーー沖田はそんな狂気の持ち主だった。


「……いえ……」


 そういうわけじゃない。


【いつのまにか私は……人の顔を、表情を、その人が何を考えているかを。無意識のうちに探るようになったのです。】


(姫様は、ずっと……苦しんできたんだ)


「……わかりません。でも少なくとも僕は、姫様をそのようにはしたくないです」


「……そうですか」


 いつのまにか沖田は刀を納めていた。


 藁束の酷い有様を見て、この気持ちのやり場がわからず、やけになった自分の未熟さが急に嫌になった。


「山南さん、人間って何なんでしょうか?」


「……ずいぶん唐突だね」


「黒谷にいけば、わかるでしょうか」


 山南は仕方無さそうに肩をすくめた。


「総司くんのしたいようにすれば良いんじゃないかな。君はまだ若い。自分の目で見て、答えを見極めればいい」


「……はい」


 沖田の中で何かがじりじりと燃えていた。

 

 その感覚は、なぜか心地よく沖田の心を高揚させていた。


 気がつけば、先程までの荒々しい沖田はすっかり形を潜めていた。


 穏やかな風が吹いて、沖田の頬を掠めていく。


 まだ答えは見つからないけれど……黒谷に行けばきっと。

人と物の区別ができない、新撰組はそんな危険な浪士たちの集まりだと思っています。

※このIFの物語ではそんな所は深掘りしません。優しい物語ですので……多分。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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