黒谷に行けばきっと……
沖田は屯所で荒ぶっていた。そこへ山南が現れて沖田の話を聞くが……
沖田の手でバラバラになった藁束を片付けながら山南は口を開く。
「……総司くんにとって、敏姫様はこの藁束みたいな物ですか?」
山南に指摘されて、初めて沖田は自分のしたことに気付いたようだった。
スパッと切れた藁束もあれば、切り口が荒い藁束もある。いずれにしてもそれは酷い有様だった。
山南は沖田に、敏姫もこの藁束のように扱っていいのかと暗に聞いてきたのだ。
沖田はそういう男だとわかって山南は聞いて来た。
人と物の区別ができないーー沖田はそんな狂気の持ち主だった。
「……いえ……」
そういうわけじゃない。
【いつのまにか私は……人の顔を、表情を、その人が何を考えているかを。無意識のうちに探るようになったのです。】
(姫様は、ずっと……苦しんできたんだ)
「……わかりません。でも少なくとも僕は、姫様をそのようにはしたくないです」
「……そうですか」
いつのまにか沖田は刀を納めていた。
藁束の酷い有様を見て、この気持ちのやり場がわからず、やけになった自分の未熟さが急に嫌になった。
「山南さん、人間って何なんでしょうか?」
「……ずいぶん唐突だね」
「黒谷にいけば、わかるでしょうか」
山南は仕方無さそうに肩をすくめた。
「総司くんのしたいようにすれば良いんじゃないかな。君はまだ若い。自分の目で見て、答えを見極めればいい」
「……はい」
沖田の中で何かがじりじりと燃えていた。
その感覚は、なぜか心地よく沖田の心を高揚させていた。
気がつけば、先程までの荒々しい沖田はすっかり形を潜めていた。
穏やかな風が吹いて、沖田の頬を掠めていく。
まだ答えは見つからないけれど……黒谷に行けばきっと。
人と物の区別ができない、新撰組はそんな危険な浪士たちの集まりだと思っています。
※このIFの物語ではそんな所は深掘りしません。優しい物語ですので……多分。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




