荒れる沖田
黒谷のお屋敷で容保と敏姫に何も言えず屯所に帰って来た沖田は、燻る気持ちを藁束にぶつけるのだった。
その日の夕刻ーー壬生の屯所にて。
バスンッ!バスンッ!
鬼気迫る沖田が、真剣で藁束をめちゃくちゃに切っていた。
沖田のその様子と真剣を使っていること、自分の苛立ちを隠そうともしない雰囲気を、他の浪士たちは遠巻きに見るしかなかった。
ーー今の状態の沖田は危険だ。
誰もがそれを知っていた。
この状態の沖田を止めるには、沖田の気が済むまで藁束を斬るか、または誰か仲裁に入るか……
過激な志士を斬るか。
しかなかった。
「……総司くん」
ーーその時。荒ぶる沖田に向けて静かな声が落ちた。
山南敬助ーー新撰組の総長の声だった。
血の気の多い新撰組では珍しく穏やかで知性を感じさせる浪士だ。
「総司くん、何かあったんですか?」
「……山南さん、今話しかけないでください。僕はイラついているんです」
「それは見てわかるよ」
「……山南さん……」
「……?はい?」
「僕、今まで人を黙らせるのは、簡単だと思ってました」
「……」
「でも思い通りにならない」
「誰のことを言ってるんです?」
「あの平和ボケしたお姫様のことです!」
「ああ、例の容保様のご正室のことか?総司くんにしては珍しくご執心の様子ですね」
山南は荒ぶる沖田にも臆さず、静かに続けた。
「……気になりますか?」
「……ええ、気になります。一体何をしたらあの姫様は怖がってくれるのだろう」
「ははは、俺は総司くんのその発想がすでに怖いよ」
「……でも同時に面白いのも確かです」
「ん?」
「これから徐々に壊していく楽しみが増えましたから」
その言葉を聞き、山南が目をスッと細めた。
「……総司くん、敏姫様は君に何もしていないだろう」
「いいえ」
沖田は誰に言わずともなく呟く。
「……しました」
【沖田さんの気持ち、なんとなくわかります。私も病に伏していた時、孤独でしたから……】
あの姫様は、僕のことを知った風な口をきいた。
武力も何もないくせに。
腕など細くて簡単に折れそうなくせに。
心は誰よりも強くて。
「……最初は面白い、と思っていたのに」
今はわからない。
沖田の手でバラバラになった藁束を片付けながら山南は口を開く。
作者は沖田の性格がまだよくわかっていないので、沖田と敏姫と容保と一緒に知っていきたいと思っています。シリアスな感じが続いて申し訳ないです。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




