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もう一度、あなたと。  作者: 杉野仁美
第五章 恐れる心と力

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荒れる沖田

黒谷のお屋敷で容保と敏姫に何も言えず屯所に帰って来た沖田は、(くすぶ)る気持ちを藁束にぶつけるのだった。

 その日の夕刻ーー壬生の屯所にて。


 バスンッ!バスンッ!


 鬼気迫る沖田が、真剣で藁束をめちゃくちゃに切っていた。


 沖田のその様子と真剣を使っていること、自分の苛立ちを隠そうともしない雰囲気を、他の浪士たちは遠巻きに見るしかなかった。


 ーー今の状態の沖田は危険だ。

 誰もがそれを知っていた。


 この状態の沖田を止めるには、沖田の気が済むまで藁束を斬るか、または誰か仲裁に入るか……


 過激な志士を斬るか。


 しかなかった。


「……総司くん」


 ーーその時。荒ぶる沖田に向けて静かな声が落ちた。


 山南敬助ーー新撰組の総長の声だった。


 血の気の多い新撰組では珍しく穏やかで知性を感じさせる浪士だ。


「総司くん、何かあったんですか?」


「……山南さん、今話しかけないでください。僕はイラついているんです」


「それは見てわかるよ」


「……山南さん……」


「……?はい?」


「僕、今まで人を黙らせるのは、簡単だと思ってました」


「……」


「でも思い通りにならない」


「誰のことを言ってるんです?」


「あの平和ボケしたお姫様のことです!」


「ああ、例の容保様のご正室のことか?総司くんにしては珍しくご執心の様子ですね」


 山南は荒ぶる沖田にも臆さず、静かに続けた。


「……気になりますか?」


「……ええ、気になります。一体何をしたらあの姫様は怖がってくれるのだろう」


「ははは、俺は総司くんのその発想がすでに怖いよ」


「……でも同時に面白いのも確かです」


「ん?」


「これから徐々に壊していく楽しみが増えましたから」


 その言葉を聞き、山南が目をスッと細めた。


「……総司くん、敏姫様は君に何もしていないだろう」


「いいえ」


 沖田は誰に言わずともなく呟く。


「……しました」


【沖田さんの気持ち、なんとなくわかります。私も病に伏していた時、孤独でしたから……】


 あの姫様は、僕のことを知った風な口をきいた。


 武力も何もないくせに。

 腕など細くて簡単に折れそうなくせに。


 心は誰よりも強くて。


「……最初は面白い、と思っていたのに」


 今はわからない。


 沖田の手でバラバラになった藁束を片付けながら山南は口を開く。

作者は沖田の性格がまだよくわかっていないので、沖田と敏姫と容保と一緒に知っていきたいと思っています。シリアスな感じが続いて申し訳ないです。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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