終わりだ、黒崎豹魔
豹魔が地面に倒れ、長かった戦いにようやく決着がつこうとしていた。
ーーこの刀は、愛しい人を守るためにあるのだ!
斉藤は、愛刀『鬼神丸国重』をそっと撫でる。
そしてゆっくりと、豹魔の喉元に刀の切っ先を当てた。
(……終わりだ……黒崎豹魔。もう少し俺とお前の出会いが早かったら)
「……違っていたのかもな」
だが、今さらだ。豹魔は自分で言っていた。『一瞬で人が死んでいく現世』だと。
その『一瞬』が自分に回って来ただけだ。
俺はーーもう、豹魔と同じではない。
愛する人を見つけてしまったから。
『はじめさん!』
斉藤の脳裏に、鈴蘭のかんざしを揺らして歩くおときが浮かぶ。
斉藤はふっと軽く笑みを浮かべた。
(な、何だコイツ……笑ってやがる……)
豹魔の巨体が初めて恐怖で震え、無意識に後ずさる。
その瞳には、もはや戦いを楽しむ色など微塵もない。
先ほどまで全身を駆け巡っていた闘争心が、急速に冷えていくのを感じた。
目の前の男・斉藤は、何も語らない。
ただ、こちらが動くのを待っている。
ーー動けば、斬られる。
これがーー本気の剣士の殺気……これが、新撰組の組長・斉藤一の圧か!
(おもしれぇ……)
斉藤の威圧に恐怖を感じながらも、それでも豹魔は立とうとした。
もうとっくに体力は切れているはずなのに。
これはもはや意地だ。
豹魔の意地は斉藤にも伝わった。
「……やめとけ。お前は元武士だろう」
「……だったらなんだ!?お武家様の作法なんざ、こちとらとっくの昔に捨ててんだよ!」
豹魔が立ち上がろうと、地面に手をついたその時。
「そうか。ならば……」
斉藤が短く答えた。
「ーーお前を斬る」
その決意に、もはや迷いはなかった。
斉藤が刃を振り下ろそうとした、その時。
ふわり。
微かに、鈴蘭の香りがした。
こ、この感じは……( ;∀;)
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