おときを泣かせた報い
豹魔は斬られる事を恐れていなかった。
ただ力で相手を打ちのめす。それだけだった。
一方の斉藤は……
「そうか……お前が……」
「なぁにブツクサ言ってんだ!!」
豹魔が地を蹴った。
巨体に似合わぬ速さで間合いを詰め、拳を振り下ろす。
斉藤はわずかに身体を捻ってそれをかわした。
拳が地面を叩き、乾いた音が響く。
「おっと、逃げんのかよ!」
豹魔は間髪入れず、もう一度踏み込んだ。
今度は斉藤の刀を恐れる様子もなく、肩からぶつかるように突進してくる。
斉藤は一歩だけ退き、刀の峰で豹魔の腕を受け流した。
豹魔は止まらなかった。
斬られることを恐れるどころか、傷を負うことさえ構わず、力任せに押し込んでくる。
「ははっ!そうだ!もっと本気で来いよ!」
豹魔の笑い声が、通りに響き渡った。
斉藤はその姿を見据える。
(……攻撃を避けることよりも、力で押し切ることを優先するか)
無謀に見えるが、体格と膂力を活かした戦い方だ。
並の剣士ならば、圧倒的な力に押し負けてしまうだろう。
(さすが、俺のリストに載っていただけの事はある……いや。今はそんな事は関係ない)
こいつはーー……
黒崎豹魔は、おときを傷つけた。
おときを怖がらせた。
おときを泣かせた!
ーーリストに載っていようといまいと、虎之助の兄だろうと。
(……許せん……)
斉藤は焦らず、豹魔の動きを見極め、無駄な力を使わずに間合いを保つ。
相手が大きく踏み込んだ瞬間、その懐へ入る隙を探っていた。
「……斉藤!」
豹魔が叫ぶ。
「もっと斬ってこいよ!俺はまだ倒れねぇぞ!」
斉藤の瞳が、すっと細くなった。
「……そうか」
静かな声が、燃え盛るような豹魔の笑いを遮った。
「……ならば、立っていられなくなるまで相手をしてやる」
(おときを傷つけ、怖がらせ……)
豹魔の笑みが、さらに深くなる。
「ひははは!そうこなくちゃつまらねぇ!!」
(そして何より、おときを泣かせた報い……その身で受けてもらうぞ!黒崎豹魔!!)
「黒崎豹魔!!来い!」
二人の間に、再び緊張が走った。
(おときを泣かせた報い……その身で受けてもらうぞ!黒崎豹魔!!)
この言葉を声に出してないのが逆にかっこいいですよね!無口だけど心では怒りの嵐が荒れ狂う。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




