↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もう一度、あなたと。  作者: 杉野仁美
第四十一章・おときと豹魔

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

446/488

流暢な言葉の代わりに

危険な男・黒崎豹魔からおときを離した斉藤はおときの身を案じる。けれどおときの弱々しい声は謝罪を紡ぐばかりで……

 ーー違う。悪いのはおときではない。


 おときはただ楽しみたかっただけだ。一人で京都の街を歩いてみたかっただけだ。

 俺からもらった鈴蘭のかんざしを着けて、ちょっと見せびらかしてみたかっただけだ。


 そんな純粋な思いで街に来ただけだ。


『えへへ……嬉しい。これから毎日師匠を想って着けますね』


 鈴蘭のかんざしを贈った時の、おときの微笑みが浮かぶ。


 悪いのはおときではない。


 悪いのはーー……


(おときを守れなかった俺だ)


「……すまない……おとき……」


 聞こえるか聞こえないかの声で、おときに話しかける。


 斉藤は流暢(りゅうちょう)に言葉を紡げない。歯の浮くような口説き文句も、その場を取り繕うだけの嘘も、守る気がない約束もできない。


 代わりに、おときに謝罪の言葉を落とす。


 それは心からの、絞り出すような言葉だった。


(こんな時に、こんな事しか言えないとはな……)


 斉藤はそう自嘲しながらおときをもう一度強く抱きしめた。驚いた。腕の中のおときはこんなに小さかっただろうか?


 斉藤の腕の中で、安心したようにおときは微笑んだ。


「それから……はじめさん」


「おとき、もう話さなくていいから……」


「ありがとう……あの言葉、嬉しかったです」


「……あの言葉?」


「『恋人だ』って……言ってくれて……//」


 ドクン!


『……おときは俺の恋人だ』


「そ、それは……//」


 安心したのか、おときは斉藤の胸に顔を埋めるようにして眠りについた。


 斉藤はおときのその様子を見、ここに来て初めて安堵の息を漏らした。


斉藤さんが流暢に愛の言葉を口にできないことも、おときさんはちゃんとわかっていると思います。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。