その静けさが恐ろしい
ついに対面したおときと豹魔。豹魔はよりにもよって、おときが斉藤に買ってもらったかんざしを壊そうとしていた。
「男に買ってもらった物が気にいらない」という理由だけで。
おときはついに泣きだしてしまう。
ーー斉藤は恐ろしいほど静かだった。
しかしその瞳には確かに二人の姿が映っていた。
面白がっておときのかんざしを壊そうとする男とーー
かんざしを守ろうとして、大男を相手に泣きじゃくりながら立ち向かうおときの姿が。
「おとき……」
斉藤が真っ先に口にしたのは、おときの名前だった。
斉藤がおときを呼ぶ声は、ひどく柔らかく、優しいもので。
(えっ……)
「はじめさん!来てくださっ……たんです……」
ーーその時だった。
斉藤の目の前で、おときは倒れてしまった。
豹魔に害を加えられたのではない。
ただ斉藤の優しい声を聞いて、安心して力が抜けたのだ。
「へぇ〜、もしかしてお前がこの女が言っていた『はじめさん』かぁ」
豹魔はあろうことか倒れているおときの髪を引っ掴んで、その白い顔を斉藤に見せびらかす。
「残念ながら、愛しのはじめさんを見るまえに気ィ失ったみたいだがな!がっはっは!」
「ぅ……はじめさん……ごめんなさい……私……」
まだ意識があるおときがうわごとのように口を開く。
「なんだァ?やはり可愛い顔してんじゃねぇかあ?」
男が再びおときの髪を寄せ、顔を近づけたその時ーー
「触るな」
いつ踏み込んだのか。
斉藤が豹魔の懐に刀を突きつけ、豹魔が呼吸をひとつでもすれば死を意味するほどの距離にいた。
豹魔はその素早さに驚き、一瞬で身を固くした。
目の前にいる男は、自分が相手にしてきた連中とは明らかに違う。
大柄な豹魔の懐に、音もなく入り込んだ斉藤。
その刀の切っ先は、豹魔の喉元にぴたりと据えられていた。
その静けさこそが、斉藤一の力。
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