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もう一度、あなたと。  作者: 杉野仁美
第四十一章・おときと豹魔

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その静けさが恐ろしい

ついに対面したおときと豹魔。豹魔はよりにもよって、おときが斉藤に買ってもらったかんざしを壊そうとしていた。

「男に買ってもらった物が気にいらない」という理由だけで。

おときはついに泣きだしてしまう。

 ーー斉藤は恐ろしいほど静かだった。


 しかしその瞳には確かに二人の姿が映っていた。


 面白がっておときのかんざしを壊そうとする男とーー

 かんざしを守ろうとして、大男を相手に泣きじゃくりながら立ち向かうおときの姿が。


「おとき……」


 斉藤が真っ先に口にしたのは、おときの名前だった。


 斉藤がおときを呼ぶ声は、ひどく柔らかく、優しいもので。


(えっ……)


「はじめさん!来てくださっ……たんです……」


 ーーその時だった。


 斉藤の目の前で、おときは倒れてしまった。


 豹魔に害を加えられたのではない。


 ただ斉藤の優しい声を聞いて、安心して力が抜けたのだ。


「へぇ〜、もしかしてお前がこの女が言っていた『はじめさん』かぁ」


 豹魔はあろうことか倒れているおときの髪を引っ掴んで、その白い顔を斉藤に見せびらかす。


「残念ながら、愛しのはじめさんを見るまえに気ィ失ったみたいだがな!がっはっは!」


「ぅ……はじめさん……ごめんなさい……私……」


 まだ意識があるおときがうわごとのように口を開く。


「なんだァ?やはり可愛い顔してんじゃねぇかあ?」


 男が再びおときの髪を寄せ、顔を近づけたその時ーー


「触るな」


 いつ踏み込んだのか。


 斉藤が豹魔の懐に刀を突きつけ、豹魔が呼吸をひとつでもすれば死を意味するほどの距離にいた。


 豹魔はその素早さに驚き、一瞬で身を固くした。


 目の前にいる男は、自分が相手にしてきた連中とは明らかに違う。


 大柄な豹魔の懐に、音もなく入り込んだ斉藤。


 その刀の切っ先は、豹魔の喉元にぴたりと据えられていた。


その静けさこそが、斉藤一の力。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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