後悔先に立たず
茶屋の前でついに出会ってしまったおときと豹魔。
豹魔のような男に会ったことのないおときは戸惑うばかりで……
おときは震えながら何とか男の腕を振り解こうとする。だが残念ながら腕は豹魔にガッチリと掴まれてビクともしない。
「おい、そんなに怖がるなよ。俺はお前に興味があるだけだぜ?」
豹魔は、泣きそうな顔で震えているおときを見下ろした。
「俺の言う通りにすれば悪いようにはしねぇって。すぐそこに馴染みの店があってだな。そこで休もうぜ。こんな茶屋でなくて」
おときは悔いていた。
虎之助が屯所に戻る時に、わがままを言わず帰ればよかったと。
斉藤に怒られるくらいなんだ。
せいぜい算術か、お菓子抜き程度のこと。
仕方無さそうに笑って、結局はおときを許す斉藤の姿が脳裏に浮かんで、おときは思わず泣きそうになった。
「……あ、あの……私、もう帰らないと……」
(はじめさん!はじめさん!会いたいです……私、はじめさんの所に帰りたいです……)
おときはやっとのことで声を振り絞った。
「帰る?せっかく俺が声をかけてやったってのにか?」
豹魔が一歩近づく。
おときは逃げようとした。
けれど、豹魔はムキになっておときの腕を掴む。
瞬間、おときの身体が強張った。
「い、痛い……!」
「おいおい、そんなに騒ぐなよ」
豹魔は面白がるように笑い、おときの顔を覗き込んだ。
おときの目から、とうとう涙がこぼれた。
「……離してください……」
「へえ。こんなんで泣くのか。ずいぶんと大事に育てられたお嬢さんみてえだな。色も白いし。体もさぞかし白くて傷ひとつないんだろうなぁ」
ははは、ともう一度豹魔は下卑た笑いを漏らす。
おときはもう声も出せない。
何だコイツ〜!!今まで出てきた敵役で一番やばい奴じゃない?
おときさん悪いのはあなたじゃない豹魔だよ!
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