異常な男
おときが茶屋にてお菓子を選んでいたその時。明らかに普通ではない男が話しかけてきた。
おときが目を向けた先には、赤茶色の瞳だけがギラギラと嫌な光を放つ、見るからに普通じゃない男が立っていた。
おときは最初自分に話しかけられたことに気付かず、キョロキョロと周りを見渡した。
「何をキョロキョロしてる。俺が話しかけてんのはお前さんだよ」
グイッ!
男はいきなりおときの細くて白い腕を掴んだ。
「痛い!」
おときは思わずそう叫んだが、男は聞く耳を持たなかった。
(何……この人、いきなり現れて私の腕を掴んで……)
おときは震えながら男を見上げる。
(はじめさんも大きかったけど、この人みたいに乱暴じゃなかったですわ)
『おときさんは俺の言う通り、人の往来が多い方に行ってくださいね!茶屋に入ってもらっても構いませんから』
(虎之助さんの言う通り、茶屋に入ろうとしていただけなのに……)
おときは混乱していた。元々おときはお嬢様育ちで世間知らず。京都の治安が悪いとは言っても、こんな風にいきなり腕を掴むような男がいることは想定していなかった。
(今の京都には、こんな無礼な人がいるの??)
はじめさんがいつも心配してくれていたのは、こういうことが起こるってわかっていたからなの??
豹魔はおときの細くて白い腕を見ながら、下卑た笑みを浮かべる。
「細っこい腕だな。ちょっと力を入れたら折れちまいそうだ」
そして豹魔は、あろうことかそのままおときの腕にかぶりついた。
「……ひっ……」
あまりのことにおときは戦慄した!
(こっ、この人、普通じゃないですわ!!)
いきなり腕にかぶりつくなんて、人間のやる所業じゃないよ。おときさん逃げて〜!
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