消えることのない怒り
斉藤の静かな怒りと殺気に椿と虎之助の二人はすっかり萎縮してしまっていた。だがそこへ……
虎之助はぎゅっと目を瞑り、俯くしかなかった。
椿はその様子を少し離れたところで見ていた。
椿は不逞浪士や野盗の殺気には慣れていても、斉藤のような根っからの剣豪の殺気には慣れていない。
しかも斉藤は普段から何を考えているかわからない男だ。
「…………」
だが、今はそんな事を言ってられなかった。おときが危ないのだ。
「さ、斉藤さん……」
椿が呼びかけようとした、その時。
「落ち着けよ、はじめ」
背後から、土方の声がした。斉藤はゆっくりと振り返る。椿は土方のその声に安堵し、無意識に土方の元に駆け寄った。
「……副長」
「話は聞いた。おときさんが三条にいるんだな」
「……ああ」
「なら、今ここで怒りを露わにしても仕方ねえ。まずは無事を確かめる。それからだ」
土方は斉藤の目をまっすぐに見据えた。
土方はこちらに寄って来た椿の肩をさすりながら続ける。
「お前が焦る気持ちは分かる。だが、お前のその殺気を向けられたら、椿も虎之助も萎縮して身動きが取れねえだろうが」
土方に指摘された斉藤は、虎之助と椿の二人を見た。二人とも、斉藤の殺気に怯えているように見えた。
斉藤は視線を落とした。
「……すまない」
「謝る暇があったら行くぞ。椿、朱理を頼む」
「う、うん。ありがとう土方」
土方は斉藤の肩を軽く叩く。
「はじめ。おときさんを見つけるまでは、余計なことを考えるな」
「……分かっている」
そう答えた斉藤の声は、先ほどと変わらず静かだった。
だが、その瞳の奥には、消えることのない怒りが燃えていた。
朱理は屯所の中で土方と椿と過ごすうちにすっかり組長たちと打ち解けています。
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