触れたら爆発する地雷
おときの守護神斉藤が虎之助の前に現れ、虎之助は事情を説明する。
それは恐ろしく静かな声だった。
怒鳴られたわけでも、刀を抜かれたわけでもない。それなのに虎之助は、喉がひどく渇くのを感じた。
「さ、斉藤さん……実は、おときさんが……」
虎之助は観念したように事情を語り始めた。
事情を説明する間、斉藤は一言も発しなかった。
ただ、その場に立ち尽くし、虎之助の言葉を聞いている。
おときが一人で街へ出たがっていたこと。斉藤から贈られた鈴蘭のかんざしを着けて、せっかくのおめかしを楽しみたいと言っていたこと。
そして、虎之助がその場を離れ、椿を呼びに戻ってきたこと。
話が進むにつれ、斉藤の表情から少しずつ感情が消えていった。
何を考えているのかわからない。
まるで触れたら爆発する地雷のような気配が斉藤の周りを覆っていく。
「おときを一人で置いて行ったのか?……今の京都に……?」
斉藤はやっと口火を切ったが、その言葉の一つひとつがまるで凶器のように虎之助の全身を刺した。
「……それで?」
「は、はい?」
「おときは今、どこにいる」
「三条大橋の近くです。人通りの多いところにいるように言い聞かせましたが……」
「……そうか」
斉藤が腰の刀に手をかけた。
「……っ」
虎之助はこの時ほど自分の判断を悔やんだことはなかった。
いかに事情があったといえど、おときを一人にした事実は変わらない。
虎之助はぎゅっと目を瞑り、俯くしかなかった。
椿はその様子を少し離れたところで見ていた。
椿は不逞浪士や野盗の殺気には慣れていても、斉藤のような根っからの剣豪の殺気には慣れていない。
しかも斉藤は普段から何を考えているかわからない男だ。
虎之助は斉藤が現れたことで安心するかと思ったら恐怖が勝ったようですね。これも傍若無人な兄のせいでしょうか。
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