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もう一度、あなたと。  作者: 杉野仁美
第五章 恐れる心と力

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あんたを見ているとイライラする

会津藩の黒谷のお屋敷にて。敏姫は一人で行動していた。そこへ……

 会津藩・黒谷のお屋敷にてーー


 この屋敷の一室にいる敏姫はつい先日まで病で伏せっていた。


 敏姫はもう少し生きてみたかった。皆が普通に行っている『当たり前』を取り戻すために。


 そうして不思議な力で生かされた敏姫は、今日も生きていることに感謝しながら目を覚ますのだった。


 今日は下働きのとめが出かけてていないので、敏姫は代わりの女中が来るのを待っていた。


 だが、命の喜びを実感した敏姫は待ちきれなくて屋敷の中をうろうろしている。


 黒谷のお屋敷はとても広い。


 敏姫はそのお屋敷の、特に広い庭園を容保公と見に行こうとして歩みを早めていた。


 整えられた枯山水に、ちょっとした茶屋。池には錦鯉もいて。庭には入念にお手入れされた季節の花々が咲いていて……敏姫の隣には容保公がいて……


「へぇ……今日はお一人ですか?」


「えっ?」


 敏姫が顔を挙げると、そこには背が高くて、細身の男性ーー沖田が立っていた。


「沖田さん、おはようございます」


 敏姫が挨拶をすると沖田は少し顔を歪めた。


「あんた、僕が怖くないの?」


 面白くないと言った様子で不躾に沖田が聞いてくる。とめが居たら、「無礼な」と言っていただろう。


「へっ?」


(前にも聞かれたこの質問……どうしよう。怖いって言った方がいいのかな?沖田さんは「怖い」って言って欲しいんだよね。きっと……)


「えっと……」


 でも嘘はよくないし……


 敏姫があれこれ考えていると。


「『怖い』って言えばいいと思ってる?」


 え……


「あんた見てるとイライラするんだよね。隙だらけなのに、人の感情の機微には人一倍敏感で……」


「……」


 敏姫は沖田の真っ暗な、何を考えているかわからない瞳を見る。


(この人も、私と同じなのかしら?)


 姿勢を正して、敏姫は訥々(とつとつ)と語り始めた。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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