熊に睨まれた蛙
「守ります」
「俺たちが気付きます」
二人の言葉を聞いた姫様がふわりと微笑む。その微笑みはまるで春風のようで。
「……それなら安心ですわ。熊さん二人に睨まれては、蛙さんも逃げますわね!」
「いやいやいや!!姫様それ蛇に睨まれた蛙だから!例えが違いますって」
(……いや、合ってるか??)
私と姫様の言葉に一瞬、斉藤と永倉はお互い顔を見合わせたかと思うと、次の瞬間、豪快な永倉の笑いが屋敷中に響き渡る。
斉藤は肩で笑いを堪えている。
「はっはっは!そうそう姫様!蛙は熊に任せて、ヤベェと思ったら逃げてくだせえ」
「……新八。自分で認めるのか」
「いいじゃんかよ!姫様からなら熊呼びもそう悪くないしな、お前もそうだろ?」
「……ああ」
悪くない、と一言だけ言って斉藤はふ、と笑う。
「熊……斉藤さん!もう一回、護身術やってもいいですか?」
「……ああ……」
初代熊……じゃなかった。斉藤は言われるがままに姫様の護身の相手をする。
今度はハッキリと、斉藤がわざと力を抜いているのがわかった。
「……あんなのが護身術でいいの?本当の盗人は加減を知らないってのに……」
私が小声で呟いていると、永倉が『しーっ』とでも言うかのように口元に人差し指を立てた。
(いざとなりゃ、俺たちがどうにかしますから!)
その様子に私は肩をすくめる。この浪士達はよほど自分の腕に自信があるのだろう。
私も腹を括ろう。容保様の覚えがめでたいこの二人のことを信じようと。
チラリと見ると、姫様の弾けるような笑顔と、それを見守る熊二人。
まいったねぇ……
景色が霞んで見えちまうよ。
そんな、眩しい笑顔。
今までの苦労や、病だったことを忘れっちまうくらいの……
結局のところ、この浪士二人が何とかしてくれるってことですね。頼りになります。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




