姫様、ついに木刀を持つ。
永倉新八が剣の稽古をしていた。その様子に敏姫は興味深々で……
「姫様もう少し近くで見て大丈夫だ。それにこれは真剣じゃなくて木刀だからよ」
永倉が笑いながらひらひらと手を振る。
「木刀でも危ないことには変わりませんよ!姫様……」
「ほら、こうやってーー」
シパン!!
私の言葉を無視して永倉は再び藁を打つ。
「すごい……!」
姫様が感嘆の声をあげた。その瞳は完全に木刀に夢中になっている。
(嫌な予感嫌な予感嫌な予感嫌な予感)
私は頭を抱えた。
「姫様もやってみます?」
「えっ……!」
やっぱりー!!完全に予想通りの展開!!どうしよう、箸より重いものを持ったことのない姫様が木刀なんか持ったら……!!
「い、いえ……敏にはそのような……」
「大丈夫大丈夫!軽く振るだけでいいんですよ!」
「……軽く……?」
(だめだ、完全に乗り気になってる)
どうしよう、どうしよう、万が一姫様が木刀の重さに耐えきれずに骨折とかして重症を負っちゃったら……
私が混乱してありえもしない事を考えていたその時ーー
「……やめておけ」
低い声が、割って入った。
斎藤一だ。
「この方は姫だ。遊びでは済まん。万一のことがあったらどうする」
「万一?」
永倉が全然わからないという顔で聞く。
「そう、万一だ。このお方はお前と違って箸より重いものを持ったことがない……たぶん。生まれついての姫様だ。その姫様が万一怪我でもしたらどうする」
斉藤がどこかで聞き齧った姫様の定義をとつとつと語る。
その語り口があまりに棒読みなので私は思わず吹き出してしまった!
いや、斉藤が言ってることは合ってる!合ってるけど……
「し、失礼です//敏だってできますわ。このくらい……」
その言葉に、一瞬空気が変わった。
永倉がにやりと笑う。
「いい心がけだ!ほら、これ持ってみてください!」
(い、いやいや姫様!そこでムキにならないでください〜!!)
私の願い虚しく。木刀が姫様の手に渡る。
「お、重いですわ……!」
「最初はそんなもんです!」
「こう……こうですか……?」
ぎこちなく構える姫様。
(危ない危ない危ない危ない!!誰か止めて!斉藤!)
私が姫様を止めようとしたその時ーー
「……構えが違う」
斎藤がすっと近づいた。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




