ポンコツ野盗・白峰椿
今度は新撰組一のモテ男土方が活躍?するお話です。
丑の中刻ーー
月明かりだけが壬生屯所を照らす深夜。
白峰椿は音もなくその部屋の前に降り立っていた。
(正面から入るのは、間抜けな脳筋侍のすること。私ならーー)
そう考えて椿は身を翻し、屋根の上に飛んだ。
天井の隙間に入り込み、隙間から様子を伺う。
(あれ?ここって……聞いてた場所となんか違くね?)
部屋の広さ、向き、間取り。全てが仲間の話と違っていた。
まあいいか。と椿は音もなく部屋に侵入し、金目のものがないか物色した。
その瞬間ーー
背後に冷たい殺気を感じ、こちらに振り下ろされる刀。椿は咄嗟に短刀でそれを防いだ。
キィィン……!
刀と刀がぶつかり合う音が、静かな部屋にやけに長く響いた。
しばらくして、月明かりが二人の顔を照らし出した時ーー
「……お前誰だよ」
「いやお前が誰だよこのコソ泥」
椿の背後に立っていた男ーー土方を見て椿が青ざめる。
「えっ?あれ?坊主じゃねえ!まさかまた私は入るところを間違えたのか!?」
ーー土方は目の前の女が焦る様子に毒気を抜かれたのか、刀を納めながら呆れたように口を開いた。
「……どこと間違えたんだ。ここは新撰組の拠点だぞ」
「やべぇ!やはり間違えてたんだ。本当は東寺に行くつもりだったのに。どおりで仲間が一人もいないわけだ」
そう言って目の前の野盗女は、たった今土方に斬られそうになっていたのにヘラヘラと笑う。
(なんだ、このコソ泥女……俺が怖くないのか?)
「間違えてごめんな!何も盗んじゃいないから安心して。詫びはきっちりさせてもらう。また後日な!」
「は?」
そう言って椿は野盗特有の身のこなしでサッと屋根裏に登り、待機していた愛馬にまたがる。
「あ、そうそう。私の名前は白峰椿だよ!盗みに入る時は名乗らないんだけど、間違えて入っちまったからね」
赤い紐と鞍をつけた馬をこちらへ向けた椿が土方に手を振る。
「待たせたな朱理!仲間の元へ急いでくれ!」
椿の愛馬、朱理は一声嘶きをあげると、あっという間に屯所を後にした。
残された土方はまるで風のように現れて、嵐のように去って行った椿の様子をしばらく呆然と見ていた。
がーー
「今日の見張りは誰だァ!!野良猫が入ってきてるじゃねぇか!ことと次第と言い訳によっては斬るぞコラァ!!」
鬼の副長の怒鳴り声が屯所中に響いた。
活躍……するのかなぁ?汗
最後まで読んで頂きありがとうございました。




