私を忘れないで
小菊は頬をほんのりと染めたまま、緊張した面持ちで口を開く。
「そりゃお前ェ……世界一綺麗だよ……」
永倉らしく、まっすぐで素直な言葉だった。
それを聞いて、小菊はしばらく逡巡していたが、やがて決意したように口を開く。
「……おとめさん、しばらく兄さんと二人にしてくれませんか?」
「え?」
「えっ?」
小菊の言葉に最も驚いたのは永倉だった。
(えっ?何?小菊、何をする気だ!?//)
「……ん?別にいいけど、抱擁は五秒間だけだよ。なんたって永倉は『蟄居』の身分なんだから」
そう念を押してとめは部屋を後にした。
途端に静かになる離れの部屋。庭木を揺らす風の音だけがさわさわと二人を包んで。
「こ、小菊……とりあえず茶でも飲むか??」
「……新八さん……」
「えっ!?」
永倉の下の名前を呼んで、永倉が驚いた隙に小菊は唇が触れるだけの口付けをした。
「……これが、私の気持ちです……//」
そう言って勿忘草の菓子を永倉に渡し、赤くなった顔を見られないように。
パタパタと急いでその場から小菊は立ち去った。
残された永倉は、しばらく何が起きたのかわからないと言った様子でポカンと口を開けていた。
「へぇ〜小菊もやるもんだねえ。あれが計算じゃないのが恐ろしいよ」
結局一部始終を見ていたおとめがやれやれと言った感じで部屋に入ってきた。
「……永倉、この花の花言葉、知ってるかい?」
小菊が永倉の手のひらに乗せた勿忘草の菓子を拾い上げ、呆然としている永倉に対し、おとめが言う。
永倉はぶんぶんと首を横に振る。知らないと。
「『私を忘れないで』って花言葉だよ」
「……ッ!!//」
長かった永倉・小菊編もそろそろ終わりが近そうです。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




