青い羽織りの熊二人
永倉新八のことを敏姫様は親しみを込めて「優しい熊さん」と呼ぶ。
敏姫様の言葉にその場は和やかな空気に包まれる。
ふと姫様の方を見ると、また二人のやりとりを見て笑っている。
(……よかったですね、姫様)
姫様の笑顔を見て私も安心する。
と、その時ーー
「……何をしておる」
聞き慣れた声が、静かに響いた。
「殿!」
姫様の顔が花を咲かせたようにパッと明るくなる。浪士組の二人に見せていた笑顔とはまた違う笑顔だ。
「……敏、大事ないか?」
容保様はそう言いながらゆっくりと姫様の側に寄る。
「ええ!今優しい熊さんと初代熊さんとお話してましたの。お二人ともとても楽しい方でーー」
「だ、誰が優しい熊だよ!」
「お前だ、お前」
初代熊……じゃない。斉藤がそう言って軽く息を吐く。
「俺ェ!?」
「永倉、来ていたんだな。斉藤も」
容保様が穏やかに話しかけると、二人は恭しくお辞儀をした。
永倉は姫様が容保様の着物の裾を握っているのをめざとく見つけた。
「ふーーん?なかなかいい感じですなぁ!ガハハ!」
「永倉!いい加減にしろ。ほら、そろそろ稽古の時間だ。行くぞ」
そう言うと斉藤は永倉の首根っこを引っ掴んだ。
「何すんだよ!」
「殿、我々はお先に失礼します」
容保様に軽く会釈をすると、そのまま斉藤は永倉をずるずると引っ張って行った。
「あはは!もう我慢できない!青い羽織りの熊が二人、何やってんだか!」
とうとう私は我慢ができずに吹き出した。
「まぁとめったら……でも確かに……熊さんたちは仲が良いんですのね。ねえ殿?」
「……ああ。しかも初代熊の方は空気も読める熊だ」
えっ……
「殿ったら、御冗談を……ふふふ」
冗談!?今容保様が冗談を言った!!
明日は雨が降るか!?それとも槍??
「あははは!」
容保様の言葉に、私はまた笑ってしまった。
斎藤一より永倉新八の方が身長は高いですが、敏姫様(139センチ)から見たらどちらも大男です。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




