優しい熊さん
新撰組二番隊組長・永倉新八は、とめの言うことも気にせず敏姫にガンガン距離を詰めていく。一方の敏姫は……
永倉はそんな周りの空気もお構いなし。
やがて屈んで、姫様の目線に合わせた。
「驚かせちまってすみません!俺、声がでかいもんで!」
「……い、いえ……」
姫様が小さく答える。
「斎藤から聞きましたよ!『熊と間違えられた』って!」
「っ!!//」
姫様の顔が一瞬で赤くなる。
「ち、違いますわ!!あれは……その……」
「ははは!いやぁ気持ちはわかる!こいつ、確かに熊っぽいもんな!」
「……否定はしない」
「しろよ!!」
(しないんかい!!)
思わず私も心の中で突っ込んだ。
二人のやり取りを、ポカンと口を開けて見ていた姫様の表情が柔らかくなり、やがて小さく笑った。
「……ふふ……」
「……?」
永倉が一瞬きょとんとする。
「……なんだか……楽しい方々ですのね」
「おっ?」
「殿のそばには、このように賑やかな方がいらっしゃるのですね」
その言葉に、永倉はにやりと笑った。
「そりゃあもう!殿一人じゃ静かすぎますからね!」
「……お前が騒がしいだけだ」
「うるせえな!」
二人の掛け合いに、姫様の表情が徐々に穏やかになり、先程まで張り詰めていた空気も柔らかくなった。
よかった……怖がってない。永倉相手にも、怖がっていない様子だ。
「……姫様は、あの……もう熊とは思っていないのですか?」
私は斉藤と永倉の二人を見ながら姫様にそっと耳打ちする。
姫様は少し考えてから、
「……少しだけ……思っていますわ」
「おい!!聞こえたぞ!」
永倉が即座に反応する。
「やっぱりか!!」
「でもーー」
姫様はくすくすと笑いながら続けた。
「……優しい熊さんですわ」
「えっ?」
一瞬、空気が止まった。
「……っ」
永倉が言葉に詰まる。
「……初めて言われたな、そんなこと」
頭をかきながら、少し照れたように笑った。
その様子を見ていた斎藤がぽつりと呟く。
「……優しい熊か。案外似合ってるかもしれんな」
斉藤はそう言って顔を背け、また肩を震わせて笑いを堪えていた。
「どこがだ!!」
また騒がしくなる二人。
賑やかなお二人だ。こんなに賑やかなのは初めてかも。
ご存知かと思いますが野生の熊は危険です。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




