永倉新八との出会い
とある日ののどかな昼下がり。敏姫が庭先で咲いているツツジを愛でていたその時ーー
昼下がりの廊下。
「姫様、今日はどちらへ?」
「少しお庭を見てみたいのです。あの淡い紅の花がとても綺麗で……」
ああ、ツツジのことか……そういえばあのツツジの色。容保様が姫様に贈られたかんざしと色が似ているような……
「綺麗ね……」
姫様はまだ朝露に濡れているツツジを見て、目を細めていた。
「はい、とても」
私は姫様の背中を見ながら、少し前までこんな風に花を愛でることもなかったのを思い出していた。
なのに今は、こんなにも穏やかな時間が流れている。
(本当に、誰か知らないけどありがとうございます。姫様を生かしてくださって……)
私が頭の中で見えない誰かに感謝のお礼をしたその時ーー
「おっ?」
やけに大きく、よく通る声が響いた。
「おお〜!あの方がそうか!」
私と姫様が振り向いた先にいたのはーー
がっしりした体格に、豪快な笑みを浮かべた男。
新選組二番隊組長、永倉新八だ。
その隣には、見慣れた無表情の男。
斎藤一がいた。
「敏姫様!お会いできて嬉しいです!」
永倉はずかずかと距離を詰めてきて、あっという間に姫様の前に立ちはだかった。
「お初にお目にかかります!俺は永倉新八ってもんです!」
(……初めての割には距離が近くない?……)
「ひゃっ!?ま、また熊が出た!?」
「ぶはっ」
姫様の言葉に私は思わず吹き出してしまった!
斉藤は肩を震わせて笑いを堪えているようだった。
(姫様ったら!!)
「おい、下がれ」
斎藤がぼそりと呟く。
「え?なんでだよ!」
「……距離が近い。殿に怒られるぞ」
「そうかぁ?これくらい普通だろ?」
(それはあなたの距離感でしょ!初対面の、しかも容保様のご正室よ!)
全然わかってない顔で首を傾げる永倉。
お可哀想に。姫様は完全に固まっていた。
(だめだこれ、姫様は完全に勢いに飲まれてる)
「ひ、姫様はその……お静かな方ですので……もう少し声とか距離を考えてほしいかな〜って……」
私が間に入ろうとするとーー
「へえ〜!そりゃあ尚更話してみてえな!」
ええ〜この男なんなの?新撰組とかいう浪士組のことは聞いてたけど全然引かない!!浪士組はこんな人ばっかりなの??
永倉の思いもよらない返しに私もすっかり混乱してしまった。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




