お前を失いたくない
ひっそり屯所を離れようとする小菊に永倉は……
※シリアスな感じが続いてすみません。
「……に、兄さん」
「お前のことだからな」
永倉は静かに小太郎を見る。
「責任感じて、勝手に消えようとすると思った」
「…………」
永倉の言葉は図星だった。小太郎は俯く。
「……だって俺、このままここにいたらまた皆に迷惑を」
「馬鹿」
永倉が小太郎の言葉に被せるように言う。
「迷惑だったら、俺があんな必死に探すかよ」
「……っ」
「お前が攫われた時、生きた心地がしなかった」
永倉の声は低く、怒っているわけでもない。
でも、その声には押し殺した感情が滲んでいた。
「台所見た瞬間分かったんだ。ああ、小太郎に何かあったって。血の気が引いた」
台所の床に無残に叩きつけられた桔梗の菓子が、まるで小太郎そのもののようで。
「ゾッとした。最初に人を斬った時よりも。何よりも怖かった……お前を」
永倉はゆっくり小太郎へ近づく。
小太郎は逃げられない。
逃げたいのに。
逃げなきゃいけないのに。
足が動かない。
「お前を、失うんじゃないかと怖かった」
永倉の大きな手が、小太郎の頬へ触れる。
「必死で取り返したのに、何でまたいなくなろうとするんだよ」
「だ、だって……」
「俺は、お前にいてほしいんだ」
その言葉に、小太郎の呼吸が止まる。
「…………え」
「飯も、菓子も、夢も。笑顔も。全部ひっくるめて、お前が壬生にいてくれねぇと困る」
永倉は苦笑し、その腕が、大きな体が小太郎を包み込む。
「迷惑かけるなんて思わなくていい。俺にはお前が必要なんだ」
「に、兄さん……」
「頼む小菊……俺の前から居なくならないでくれ」
「ッ!!」
「……胡蝶蘭の菓子、作ってくれるんだろ?」
小太郎の目から、ぽろりと涙が落ちる。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




