兄さん、ありがとう。
永倉は小太郎の回復を喜んでいたが、小太郎は……
壬生屯所・深夜ーー
しん、と静まり返った廊下を、小太郎は足音を殺して歩いていた。
羽織っただけの薄い着物。
まだ熱の残る体。
少し歩くだけで息が上がる。
小太郎は独房に捕らえられた時に体が冷えたことで熱を出していた。
まだ体調は万全ではない。
だけどーー
(……出て行かなきゃ)
小太郎は屯所の台所に寄り、まだ熱の残る体を、本当は休まないといけない体をおして桔梗の菓子を作った。
(まだ、胡蝶蘭は作れないから)
明日の朝……この桔梗の菓子に兄さんが気付いてくれるといいな。
兄さん、俺を助けてくれてありがとう。
俺を守ってくれてありがとう。
こんな末端の隊士に、気を遣ってくれて……
小太郎は前髪を少しいじる。
(前髪をあげた顔を、美人だって言って……抱きしめてくれてありがとう)
俺、私は……兄さんのことが……
考えかけて、首を振る。
こんなこと思っちゃいけない。
今回のことで分かった。
自分がいるだけで、兄さんたちは危険に巻き込まれる。
俺はただ飯を作っていただけなのに。
菓子を作って、皆に食べてもらいたかっただけなのに。
それでも現実は俺が考えている以上に残酷でーー
【その体を切り刻んで首を新撰組に届けてやる】
ぞわり、と恐怖が蘇る。
小太郎は震える指で屯所の門へ手を伸ばした。
その瞬間。
「……やっぱり来たな」
「ッ!!」
暗がりから低い声が響く。
小太郎が振り返ると、そこには壁に寄りかかる永倉がいた。
酒も飲んでいない。
眠そうでもない。
まるでここに小太郎が来るのをわかっていたみたいに。
切ないですね泣
最後まで読んで頂きありがとうございました。




