もう離したくない。
小太郎は無事に救出され、一行は屯所に戻った。
小太郎の顔色も良くなったところで、虎之助が思いもよらないことを口にする。
「永倉さん、小太郎さんのこと……好いていらっしゃるんですね」
「えっ!?//」
虎之助の思わぬ言葉に、永倉は面食らった。
「……これはもう俺の勘なんですが、獣のような兄貴と過ごす期間が長かったから、なんとなくわかるんです。小太郎さんは女子ですよね」
「ええッ?なんで……」
永倉は金魚のように口をぱくぱくさせることしかできない。
「俺医学の知識もかじってるんで、小太郎さんの肩を掴んだ時に違和感を感じたんです。骨が細すぎるし……でも」
虎之助は続ける。
「この事は誰にも言いません!小太郎さんが男のふりをしているのも何か事情があってそうしてるってわかるんです。俺もそうだから」
虎之助は言うだけ言って、永倉に挨拶をして部屋を出て行った。
「バレてたのか……虎之助、恐ろしいやつだな」
でも……
【小太郎さんが男のふりをしているのも何か事情があってそうしてるってわかるんです。俺もそうだから】
「小太郎も似たような事言ってたな……虎之助と小太郎は境遇が似てるって」
永倉はそう言いながら、布団で寝ている小太郎の頬を撫でる。
「小太郎……帰って来たんだな。屯所に……」
この血に塗れた場所に。
いつ死ぬかわからない場所に。
本当は小太郎が帰るべき場所はこんな所じゃないのかもしれない。
小太郎が帰るべき場所は、台所で飯を作って、菓子を作って、そこにはきっと小太郎が料理を振る舞う家族もいて……
でももう今は……
お前を失いそうになってわかった。
「……離したくない。小菊……」
聞こえるか聞こえないかの声でそう呟いて、永倉は小太郎の手を握った。
気のせいか、小太郎の寝顔は微笑みを浮かべていた。
小菊が無事でよかったです。
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