何が新撰組だ。
永倉の重い斬撃を受けても、霧島は余裕の笑みを浮かべる。
「く、そ……ッ」
霧島は血を吐きながら立ち上がる。
だが永倉は待たない。
「小太郎はどこだ」
「……言うとでも?」
霧島は不敵に笑う。まだ余裕があるようだ。
「そうか」
永倉が刀を構える。
「じゃあ半殺しにしてから聞く」
「……ッ!!」
ゾワッと背中に冷たいものが走る。その瞬間、霧島は初めて理解した。
(この男は、私を本当に殺す気だ)
「うあああああッ!!」
霧島は叫びながら斬りかかる。
だが永倉は避けない。
真正面から踏み込む。
ギィン!!
刀同士がぶつかる。
だが力が違いすぎた。
「ぐ、あ……ッ!?」
霧島の刀が悲鳴を上げる。
ミシ……と嫌な音を立てて霧島の腕と刀にヒビが入る。
「な……」
バキィン!!
霧島の刀が真っ二つに砕け散った。
「……終わりだ」
永倉の拳が霧島の顔面へ叩き込まれる。
ゴシャッ!!
霧島の体が床を転がった。
割れた酒瓶。
蜘蛛の巣。
埃。
その中へ霧島は無様に叩き伏せられる。
「……げほっ……」
霧島は動けない。
鼻血と血反吐で顔がぐしゃぐしゃだった。
永倉はそんな霧島の胸ぐらを掴み上げる。
「小太郎はどこだ」
今度は静かな声だった。
だがその静けさが、さっきまでより遥かに恐ろしい。
「……洞窟の奥、だ……」
「鍵は」
「……懐に……」
永倉は霧島の懐から鍵を乱暴に奪い取る。
そして霧島を床へ放り投げた。
「ま、待て……永倉くん……」
「……安心しろ」
永倉は振り返らない。
「お前は殺さねぇよ」
「えっ……」
「小太郎が嫌がる」
永倉の脳裏に小太郎のほんわかした笑顔が映る。
【兄さんだけですよ】
そう言って前髪をあげて、綺麗な素顔を晒してくれた時の。
微笑んだ小菊の顔。
永倉に寄りかかる時の照れた顔。
【……俺は、新撰組だ】
永倉はぎゅっと目を瞑った。
(何が新撰組だ。惚れた女一人守れないで)
永倉は壊れかけた本堂を飛び出した。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




