俺にはお前が必要だ。
虎之助と永倉の二人は藤崎藤吾の潜伏先の廃寺に来ていた。
「いや、お前はよくやったよ。俺一人だったら敵のアジトもわからなかった」
そう言う永倉の言葉は優しかったが、焦りも感じられた。
「……でも篝さんの、『身を低くして、自分より背丈の高い草木に紛れる』っていうのがまさかこんなところで活かされるなんて……」
そう言う虎之助の顔は暗かった。
虎之助は戦えない。
永倉を敵の巣に一人で行かせる事になるのだ。
「でも俺は戦えないけど、そのかわりに戦えそうな面子を連れてきました!」
虎之助がそう言うと、虎之助の荷車の中から二人。
沖田と篝が出て来た。
「お前ら……」
「水くさいですよ永倉さん。一人で行こうだなんて、せっかく思う存分人が斬れると言うのに」
「小太郎の危機なんだろ!だったら今こそあの時の礼を返す時だ。それに、思う存分人が斬れるしな」
山猫と馬鹿犬のある意味最強のコンビが、永倉の目の前に立っていた。
「……では、俺はここで帰り道を開いて待っています。皆さん、どうかご無事で」
虎之助がそう言って荷車を安全なところに引き返して行った。
「小勢の相手は任せな。馬鹿犬と私で充分だ」
「ではどちらが多く倒せたか数えましょうか」
永倉はまた喧嘩しそうな二人をほっぽって、まずは廃寺の高所によじ登り作戦を練った。
本堂……朽ちているが、あそこに敵が潜伏していそうだ。
洞窟……小太郎はきっとあそこに捕えられている。
永倉は今までの経験を活かして、敵が潜伏していそうな場所を探す。
小太郎……小菊……
【わかりました。兄さんの前でだけです】
【その時はまた、今みたいに兄さんが駆けつけてくれるんでしょう?】
ああ……
何度でも助けてやる。
何度でも駆けつけてやる。
もう新撰組のしがらみも何も関係ねぇ。
今になって、こんな風になってから気付くなんてーー
のらりくらりと嫌なことから目を背けて来た。
小太郎の夢も聞きたくなくて避けていた。
でも今度は目を背けはしない。
小太郎、お前が。
俺にはお前が必要なんだ。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




