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もう一度、あなたと。  作者: 杉野仁美
第二十二章・小太郎と永倉と……

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狙われた小太郎

※今回から少しシリアスな話になります。

 壬生屯所の台所にてーー


 小太郎は今日も皆が寝静まったあと、日課の菓子作りをしていた。


 時刻は夜八つ(午後22時頃)。

 

 新撰組の隊士たちは皆寝静まり、風と虫の声だけがチリチリと聞こえる。


「可愛い子」


 小太郎が桔梗の菓子を作り上げて満足していたその時ーー


 ざわ、と嫌な空気があたりに広がった。

 

 さっきまでチリチリと鳴いていた虫の声はなくなり、代わりにジトッとした視線が小太郎に絡みつく。


(武家に仕えていたから分かる。これは……殺気だ)


 小太郎は元足軽の足の速さを活かして咄嗟に逃げようとした。だがーー


「……動くな」


 小太郎が動くよりも速く、真剣が、喉元に当てられていた。


(これは……獣の匂い)


 ガッ!


 首元を刀の柄で小突かれて、小太郎は気を失った。


 * * *


「……ん……」


 小太郎が目を覚ますと、そこは屯所の台所ではなく、人がやっと一人入れるくらいの大きさしかない牢屋だった。


(ここは……俺は、攫われてしまったのか?)


 暗い牢屋の中、必死に手探りで牢屋の中を探る小太郎。


(完全に人一人しか入れない。独房だ。材質は、丈夫な竹……刀があれば切れそうだけど……)


 その瞬間ーー


 がさり、と荒々しい足音が聞こえ、小太郎は瞬間的に身を縮こませた。


(武器はない、自害もできない)


「やあやあ、君かね。最近屯所の台所係に抜擢された『子リス』ちゃんは」


 優しい声音だが、何の感情も読み取れない男が現れた。

 真っ暗で姿は見えないが、一瞬照らされた月の光で髪の毛だけが見えた。


(白髪……?でもそれにしては声が若い)


「…………」


「……私は霧島藤吾。君は永倉くんとやけに仲が良いと噂で聞いてねぇ」


『永倉くん』と聞こえて小太郎は思わず声を出した。


「……兄さんをどうする気だ」


 霧島のこめかみがピクリと反応する。


 と同時にガシャン!!と音を立てて小太郎のいる独房を蹴る。


「……子リスちゃん、誰が話して良いと言った?」


「…………」


「……安心しろ。まだ子リスちゃんには生きててもらう。永倉くんを呼びだす囮としてね」


(囮……?!俺が……?)


「でもその間、逃げ出そうとしたり少しでもおかしな事をしようとしたら……その体を切り刻んで首を新撰組に届けてやる」


 霧島は「いいね?」と酷く優しい声音で話しかけた。


 俺が逃げれば、兄さんや他の隊士たちに迷惑がかかる……そうなれば、新撰組、果ては黒谷。京都中が危うくなる。


 戦争になってしまう。


「…………」


 小太郎は素直にこくこくと頷いた。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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