小太郎は屯所の癒しキャラ?
小太郎の口から篝の名前が出たことに虎之助は驚く。
「あ、すみません。俺の古い馴染みなんです。秋月篝。ものすごい剣豪のはずなのに、俺の菓子を見て目を輝かせて、弁当を持たせるとぴょんぴょん跳ねて喜んで、面白い子なんですよ」
目を輝かせて?
面白い子?
あの篝さんが?
この癒しキャラは何者なんだ?俺は目の前で菊の菓子を作りはじめた子リスを見た。
……全く殺気がない……
篝さんのようなギラギラとした覇気も。
兄さんのような人殺しの雰囲気も。
何も感じない。
「小太郎さん!」
「わ!」
俺は小太郎さんの両肩を掴んだ。細い……ちょっと力を入れたら俺でも折れてしまいそうだ。
「小太郎さん、俺は篝さんに惚れているんです……だから」
「えっ?えっ?あの篝に?虎之助さんが?」
そう言うと小太郎さんは明らかに目をうろうろさせた。言いたいことはわかる!!
あの篝さんに惚れて報われることなどないんだと!!
でも知りたい……俺、篝さんのこと何も知らないんだ。
「小太郎さん!篝さんのこともっと俺にーー」
その瞬間だった。
ギシ……
俺の背後で、床板がゆっくり軋んだ。
「……ッ」
空気が変わる。
さっきまで漂っていた味噌と漬物の匂い。
小太郎さんの作る菓子の甘い香り。
穏やかな台所の空気。
それが一瞬で凍りついた。
「……虎之助」
低い声。
背中に冷たいものが走る。
振り返らなくてもわかった。
(やばい)
この気配は、獣だ。
何度も感じたことのある獣の覇気。
山で縄張りを荒らされた時の、本物の熊。
俺の首筋に、じわりと嫌な汗が浮かぶ。この殺気の正体はーー
「永倉さん……」
どうなる虎之助!
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