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もう一度、あなたと。  作者: 杉野仁美
第二十一章・山猫のしつけ方

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勝ったやつの特権!

試合の結果はやはり篝の勝利だったが、今日はいつもと様子が違い……

 篝の木刀が、ぴたりと沖田の喉へ当てられた。


「……あ」


 沖田が止まる。


 篝は勝ち誇ったように笑った。


「私の勝ちだな、馬鹿犬!」


「…………」


 しばしの沈黙。


 風が吹き抜ける音だけがやけに耳に残る。


 紫の菊が二人の周囲を舞った。

 その光景が、先程まで命のやり取りをしていたとは思えないほど。

 

 まるで一枚の絵画のように美しくて。


 やがて沖田は、大きくため息を吐く。


「……負けましたよ」


「はっはっは!!よぉし!」


 篝が嬉しそうに笑う。


 その笑顔がだんだん近づいてきて……


「…………えっ、山猫、何……」


 今度は篝の方から軽く沖田の唇に触れてきた。


 ふに。


 沖田の心臓が、どくんと跳ねた。


「じゃあ約束だ!飯奢れよ!」


 口付けをしたというのに、篝は何もなかったかのようにそう言って笑う。


「…………え……//」


「あと!」


 篝がにやっと笑う。


「馬鹿犬、今夜は私の庵で飯食ってけ!」


「……は?」


「お前は私の特別だろ?勝った奴の特権ってやつ!」


 篝は得意げだった。


(ひょっとしてさっきの口付けってそういう……)


 沖田は『特別』の意味を、篝がかなり間違えて理解しているのを知って、しばらく呆然としていたがーー


 やがて。


「……ほんと、山猫ですね//」


「なんか言ったか?」


「いえ、何にも……」


 小さく笑ったその沖田の顔はーー


 負けたと言うのに、心底嬉しそうだった。


 * * *


「だから色々おかしいっての!!」


 おとめが猪鹿蝶を出しながら怒っていた。


「おかしくないですよ。おとめさんは強いですね。お酒も花札も……」


 小太郎が味噌田楽を用意しながら言う。


「また沖田の夢でも見たのか?おとめさん」


 永倉がカスばっかりの花札を投げ捨てる。


「ああ、こりゃ相当上等な酒でも飲まないと消えないね!」


 そう言っておとめは小太郎に出された味噌田楽に齧り付いた。

これは山猫と沖田にしかわからない世界ですね。

戦ったもの同士でしかわかり合えない世界。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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