勝ったやつの特権!
試合の結果はやはり篝の勝利だったが、今日はいつもと様子が違い……
篝の木刀が、ぴたりと沖田の喉へ当てられた。
「……あ」
沖田が止まる。
篝は勝ち誇ったように笑った。
「私の勝ちだな、馬鹿犬!」
「…………」
しばしの沈黙。
風が吹き抜ける音だけがやけに耳に残る。
紫の菊が二人の周囲を舞った。
その光景が、先程まで命のやり取りをしていたとは思えないほど。
まるで一枚の絵画のように美しくて。
やがて沖田は、大きくため息を吐く。
「……負けましたよ」
「はっはっは!!よぉし!」
篝が嬉しそうに笑う。
その笑顔がだんだん近づいてきて……
「…………えっ、山猫、何……」
今度は篝の方から軽く沖田の唇に触れてきた。
ふに。
沖田の心臓が、どくんと跳ねた。
「じゃあ約束だ!飯奢れよ!」
口付けをしたというのに、篝は何もなかったかのようにそう言って笑う。
「…………え……//」
「あと!」
篝がにやっと笑う。
「馬鹿犬、今夜は私の庵で飯食ってけ!」
「……は?」
「お前は私の特別だろ?勝った奴の特権ってやつ!」
篝は得意げだった。
(ひょっとしてさっきの口付けってそういう……)
沖田は『特別』の意味を、篝がかなり間違えて理解しているのを知って、しばらく呆然としていたがーー
やがて。
「……ほんと、山猫ですね//」
「なんか言ったか?」
「いえ、何にも……」
小さく笑ったその沖田の顔はーー
負けたと言うのに、心底嬉しそうだった。
* * *
「だから色々おかしいっての!!」
おとめが猪鹿蝶を出しながら怒っていた。
「おかしくないですよ。おとめさんは強いですね。お酒も花札も……」
小太郎が味噌田楽を用意しながら言う。
「また沖田の夢でも見たのか?おとめさん」
永倉がカスばっかりの花札を投げ捨てる。
「ああ、こりゃ相当上等な酒でも飲まないと消えないね!」
そう言っておとめは小太郎に出された味噌田楽に齧り付いた。
これは山猫と沖田にしかわからない世界ですね。
戦ったもの同士でしかわかり合えない世界。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




