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もう一度、あなたと。  作者: 杉野仁美
第二十一章・山猫のしつけ方

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野生の獣vs天才の人斬り

篝の纏う雰囲気が変わる。空気、風、木のさざめきさえ、篝の味方だった。

 ギラギラした篝の瞳が輝く。風が、花が、木が、落ちる葉さえも、篝の味方だった。


「参る!」


 ――ダンッ!!


 先に動いたのは篝だった。


 地面を蹴った瞬間、紫の菊がぶわりと舞い上がる。


「ッ、速ーー」


 沖田が言い終わる前に。


 ゴウッ!!


 木刀が真横から唸りを上げて飛んできた。


 沖田は咄嗟に受ける。


 バギィン!!


「……ッ!!」


 重い。


 永倉のような『剛』の突きとは違う。


 もっと獣じみた重さ。


 山を駆ける獣が、そのまま牙を振り下ろしてきたような衝撃だった。


「ははっ!どうした馬鹿犬!」


 篝が笑うたび、黒髪が風に散る。


 その笑顔を見た瞬間、沖田の胸が妙にざわついた。


(くそ……楽しそうだな)


 沖田は地を滑るように後退し、すぐさま踏み込む。


「だったらーー!」


 ヒュッ!!


 沖田の木刀が、風のような速さで篝の首元を狙った。


 普通の剣士なら見えない。


 だが。相手は篝。


 カン!!


「甘ぇ!」


 篝は笑いながら木刀を弾いた。


「……っ!」


 沖田の目が細くなる。


(僕の動きが全部見えてる……)


 しかも篝は型で動いていない。


 風を読むように。

 獣が獲物の気配を察するように。


 直感だけで沖田の剣を避けている。


「楽しいな馬鹿犬!」


「……僕は全然」


「嘘つけ!楽しいくせに!」


 バシィ!!


 篝の木刀が沖田の肩を叩いた。


「っ、痛……!」


「顔が笑ってるぞ!」


「笑ってません!」


 再び激突。


 ガン!ガン!!


 木刀がぶつかるたび、庭の菊が、篝の黒髪が揺れる。


 篝は強かった。


 型がない。


 読みが通じない。


 そのくせ、本能だけで絶妙に急所を外してくる。


(この山猫……僕に勝つたびに強くなっていってる)


 沖田は息を吐く。


 でもーー……


(僕を殺す気はないのか)


 それが分かるからこそ、余計に厄介だった。腹が立った。


 無意識に篝に手加減されている。そのことが沖田を大いに苛立たせた。

この二人、これからどうなっていくと思います?(聞くな)


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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