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もう一度、あなたと。  作者: 杉野仁美
第二十一章・山猫のしつけ方

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二人にとっての特別

触れるだけの口付けをされた篝は、その行為の意味がわからなかった。

「……ちょっとした挨拶ですよ。特別な……」


「特別……??」


 特別と聞いて、篝の脳裏にいつぞやのでかい壬生狼(斉藤)と、その膝に平気で座っているおときの姿が浮かんだ。


 でかい壬生狼(斉藤)が花の菓子をおときに食べさせ、頭を撫でている時のーー


【あれも特別な人にしかしないでしょう。お互いに想いあっていないとできない行為です】


 あの時の沖田の言葉を思い出し、急速に顔が真っ赤に染まる篝。


 慌てて上にいる沖田を押し退けた。


「は?は?は?は?ということはお前、お前は私のことを特別に思っているってことか?」


「……なんのことですか?」


「なんのことって今お前……」


 篝は自分の唇に触れる。


(確かに今……)


「……僕にもわからない」


 篝のその様子を見て沖田が首の後ろをかいた。


「なんの特別かはわからないけど、ただ僕にとって山猫は特別なんです」


 そう簡単に死んでほしくない。

 そう簡単に僕に負けて欲しくない。

 

 でももし山猫が死ぬ時は、その時は僕に殺されて欲しい。


 ーーそんな歪んだ僕の感情、きっと山猫ならわかってくれる。


「なんだ、そういうことか」


 今の説明で納得がいったのか?今度は沖田が首を捻る。


「そんなの、斬り合いをすればわかる!」


 篝にとっての沖田が何か。

 沖田にとっての篝は何か。


「ええ、そうですね」


 二人は互いに木刀を持ち合って、庵から紫の菊が咲き誇る庭へ出た。


 * * *


「いやいやおかしいおかしい!なんで接吻して木刀持って外行くの?!前半のほのぼのした空気どこ行った?!」


「どうしましたおとめさん?」


 小太郎が酒を注ぎながら問う。


「わかった!また総司がなんかやらかした夢を見たんだろ!俺も見たことあるから分かる。この間ははじめだった!」


 小太郎の隣にいた永倉が思いついたように叫ぶ。


「あ〜珍しく悪酔いしちまった。こうなりゃ追い

 酒しかねぇ!」


「あ、待ってください。その前に味噌田楽を……作ってみたんです」


「適当組」唯一?の常識人二人、いや三人が黒谷の庭先のあばら屋で酒を飲みながら駄弁っていた。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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