触れるだけの、ただそれだけの。
出来上がった箸を見て感動した篝は思わず……
そしてーー
「できた〜!!」
私の手にはちょうど私の手に合わせた長さと形になった枝……いや、箸が置かれていた。
「わ〜!ありがとう馬鹿犬!」
気付いたらいつも小太郎にするノリで私は馬鹿犬に抱きついてしまっていた。
「わ……」
私は抱きつく勢いがつきすぎて馬鹿犬を押し倒してしまった。
「…………ッ!」
「ありがとう馬鹿犬、私、何かを自分の手で一から作るなんて初めて……で」
馬鹿犬は突然私に抱きついて来たかと思うと、そのまま転がり、今度は馬鹿犬が私を押し倒す形になった。
* * *
「……ははは!」
「……何がおかしいんです」
「なんか犬っころのじゃれあいみたいだなと思って!」
「……」
「……馬鹿犬と私は、案外似たもの同士なのかもな」
そんな格好で。
そんな隙だらけで。
僕のあげた髪紐をつけて。
僕にそんな子どもみたいな笑顔を向けて。
誰にも知られたくない。
この場所も。
篝のこの笑顔も。
篝のこの黒髪も。
知らず、篝と沖田の距離が縮まる。互いの息が掛かるほどに。
「……逃げないんですか?」
沖田の言葉を聞き、篝はキョトンとする。
「ああ?しねぇよそんなこと。今のお前からは殺気を感じられねぇからな」
殺気……本当に山猫らしい。
野生に生きていた証拠。
常に生きるか死ぬかの二択しかない。
「……じゃあ殺気じゃなくてこれは?」
「ん?ン……」
気付いたら沖田は山猫に覆い被さり、口付けを交わしていた。
唇が触れるだけの、ただそれだけの。
「……なんだ今のは?」
篝が心底わからないような顔をして沖田の顔を見上げる。
「……ちょっとした挨拶ですよ。特別な……」
「特別……??」
特別と聞いて、篝の脳裏にいつぞやのでかい壬生狼(斉藤)と、その膝に平気で座っているおときの姿が浮かんだ。
でかい壬生狼(斉藤)が花の菓子をおときに食べさせ、頭を撫でている時のーー
【あれも特別な人にしかしないでしょう。お互いに想いあっていないとできない行為です】
あの時の沖田の言葉を思い出し、急速に顔が真っ赤に染まる篝。
慌てて上にいる沖田を押し退けた。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




