無自覚小悪魔小太郎
「俺を担いで逃げる兄さん、なかなか面白かったので……」
「お前なぁ!俺がどんな気持ちで……」
「分かってます、兄さんの気持ち。だから……いざという時は……俺を攫って逃げて欲しいです」
小太郎は時々思い切ったことを言う。
それはつまり、永倉と一緒に駆け落ちしようということだった。
だが永倉の性格上、そんなことはできないと分かった上で、小太郎はそんなことを言ったのだ。
「お、お前……それは酷いぞ!!俺が……」
「分かってます。だから『いざという時』です」
ね?と言って小首を傾げる小太郎。その仕草がなんとも可愛い。何でも言うことを聞いてしまいそうだ。
これが惚れた弱みってやつか。
永倉は頭を抱えた。
(もしかしたらあの三人より俺が一番重症かもしれねえ……)
あの三人とは斉藤と沖田、それと虎之助のことだ。
「……ああ、『いざという時』にはな!でも台所はこれからも確認させてくれ!お前は危機感がなさすぎるからな」
「はい、いつでも来て下さい」
そう言うと小太郎は、永倉の着物の裾を少しだけ引っ張った。
「……兄さん。屯所に戻るまで、もう少しこうしてて良いですか?」
「…………お前それわざとやってんのか?」
「えっ?わざと……?」
「ッあぁ〜!!可哀想な俺ェェェェ!!よりによってこんな女子に惚れちまって!!」
永倉は頭を抱えた。
「……変な兄さん。ふふっ」
そう小さく笑う小太郎は、永倉の肩に頭を預けたかと思うとすぅ、とそのうち寝てしまった。
(小太郎、寝たのか?動きっぱなしだったからな)
永倉は黙って小太郎を羽織りの中に抱きしめ直した。
「可愛い顔で寝やがって」
そう言うと永倉は小太郎の前髪を愛おしそうにいじった。
街中が目覚め始めていた。
店は暖簾を出し、「商い中」の看板が出始めた。
(ああ、屯所は今頃大騒ぎだろうな……)
永倉の兄さん可哀想に笑
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